MMVD症例での心エコー検査の精度を高める ～復習できるウェットラボ～という実習に参加してきました。
1か月ほど前にVETS TECHというwebセミナー配信会社が運営しているVets ManaViva 循環器部屋というネット上のサロンのような場所で、近日中に北海道大学の中村健介先生を講師に迎えて心エコー実習をやりますという告知がありました。
ちょっとだけ言葉の説明をしておくと、「MMVD」＝Myxomatous Mitral Valve Degeneration＝粘液腫様僧帽弁疾患でヒトでいう弁膜症、心エコー検査＝心臓超音波検査ということです。
webセミナー配信会社が人を集めた実習をするという捻じれた趣旨の企画が面白いと思いました。

中村先生は以前から心エコー検査でのLA/Ao比検査（LA/Ao比＝左心房/大動脈洞比率＝左心房の大きさを大動脈洞の太さで標準化することによって左心房の大きさを評価する検査法）の精度について言及されていました。以前に受講したwebセミナーでもお話されていましたが、実際に中村先生からご指導を受けられるとのことだったので行ってきました。

実は心エコー実習はもう何度も参加しています。現在宮崎で開業されている心エコー界隈でのレジェンド中のレジェンドの萩尾光美先生が講師だった心エコー実習と東京動物心臓病センターの岩永孝治先生の心エコー実習はシリーズセミナーでそれぞれ5-6回？（何回シリーズだったかもう覚えてない）通って心エコーについて学ぶセミナーでした。他にも単発の心エコー実習にも何度か参加しています。もう心エコー実習は受けなくてもいいかな？と思っていましたが、中村先生が仰っておられた正確なLA/Ao比検査について学べるというお話だったのと、予習と復習はネット配信で学んで実習では実技だけやるというスタイルで費用もリーズナブルだったのもあってこれが最後の心エコー実習参加！と思って行ってきました。

LA/Ao比検査はACVIMのMMVD管理ガイドラインにも載っている標準的な検査法ですが、左心房の大きさを測定して大動脈洞の太さで割るという２か所の測定が必要な検査法です。左心房をやや大きめに測定して大動脈洞をやや小さめに測定するとLA/Ao比はかなり大きく測定されてしまいますし、逆にすればかなり小さく測定されてしまいます。２か所測定して標準化するやり方は誤差を生みやすい検査であると言えます。心エコー検査自体が誤差の大きな検査だからこそ如何にして精度を高くして誤差を小さくするかが大事だと一番初めに受けた心エコー実習の萩尾先生も仰っていましたし、多くの心エコーの先生方も同様に話されています。
心臓は動いていますから時相によって形も大きさも異なります。よって測定する時相を決めておくことはとても重要です。LA/Ao比測定の時相は開いている大動脈弁が閉じた瞬間の時相だそうです。中村先生は検査の時相について、左心房の容量は開いている大動脈弁が閉じた時点から次に開くまでに半分くらいになる（左心房の大きさとしてももちろん小さくなりますね）というデータを示して大動脈弁がよく見えている時相ではなく実際には大動脈弁がよく見えないが閉じた瞬間に左心房の大きさと大動脈洞の太さを測定するようにお話されていました。
またここではその細かい理由までは載せませんが、大動脈弁がよく見える超音波ビームの測定角度は大動脈洞の測定には向かないので正確な測定ができず過小評価になるともお話されていました。
今までLA/Aoの測定は大動脈弁がよく見える画像で行っていましたから、まんまとLA/Ao比測定では過小評価をしていたことになります。

実習ではCanon様より動物用心エコー検査機の中でもハイエンド機が６台も使われていました。画像はとてもきれいでしたが、ここが実習の落とし穴です。実習ではこのように画像がきれいに出る器械を使うことが多いのですが、帰ってきて実際に当ててみると「？？？」てなることはよくあります。そこを差し引いても心エコー検査の精度が少し上がったような気がしました。
少なくともLA/Ao比の評価は以前より正確にできるようになったはずです。実際の検査でさっそく試してみたいと思いました。

また今回の心エコー実習では前方１回拍出量の検査法を教えて頂きました。心臓からの血液の拍出不全を評価する検査法です。こちらも次の心臓の検査の時に調べてみたいと思いました。

今回の実習会場に着いて着替えていると大学の同級生の児玉くんが会場に入って来ました。開口一番「この前テレビ出てなかった？！」と聞かれたので「うん。出てた。見てくれてありがとう」と先日放送されたペット防災でのZIP出演の話で盛り上がりました。
児玉くんもいい年になってるのにまだまだ勉強してるんだな～自分もまだまだ頑張ろうと思った実習参加でした。