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それって本当に慢性腸症?
それって本当に慢性腸症?
2024年09月18日
それって本当に慢性腸症?というwebセミナーを視聴しました。
本セミナーはロイヤルカナン社主催の消化器シリーズセミナーの第1回目で、講師は東京農工大学の大森啓太郎先生と日本小動物医療センター付属小動物消化器センターの中島亘先生でした。
3週間以上続く嘔吐下痢で身体検査や血液検査、画像検査、糞便検査などにより原因の特定ができない病態を慢性腸症と言います。
血液検査には一般のスクリーニング検査だけでなく膵臓の特殊検査や副腎ホルモンであるコルチゾール検査などの特殊検査も含まれます。ここで一般の飼い主様方の中には「??」ってなる方もいらっしゃると思います。そこまで検査しても原因がわからないってどういうこと?ってなりませんか?
あっさり血液検査などで病気を示唆する結果が出れば病気についての詳しい検査に入っていくことになると思いますが、時間も費用もかけて結果が出なければ慢性腸症ということになってここからまたどのような食事に反応して状態がよくなる(食事反応性腸症)のかならないのかを調べたり、免疫抑制剤に反応するのか(免疫抑制剤反応性腸症)しないのを調べる治療的検査が続いていくことになります。
食事で症状が収まってくればいいのですが、残念ながら食事で症状が収まらない場合は内視鏡検査をお願いもしています。
一言で言うと「道のりが長い!」です。いや正確には「道のりがすごく長く苦しいことがある」です。
ある程度年齢が行っている動物が下痢や嘔吐を主訴に来院されることはよくあるのですが、はじめは一般的な下痢止めを処方します。
ここでいつも「治りますように!この後大変な検査治療の道を歩んでいくことになりませんように!」と心の中で祈っています。
ほとんどの動物がここで治っていきます。
しかし、一部の動物が治らないか治っていたが薬が終わったらまた症状が出たといって来院されます。
恐らくほとんどの飼い主様は「また薬を飲めば治るんでしょ?」と楽観的に考えていらっしゃると思いますが、僕的にはこの辺でかなりドキドキしています。なぜならここで治らないとすごく長く苦しい道のりがこの後待っているかもしれないからです。
前置きがかなり長くなりましたが、今回はそんな苦しい道のりを通っていかなくてはならない慢性腸症について主に一般的な診断過程を大森先生が、主に内視鏡検査を中島先生がお話されていました。
以前のブログにも書きましたが、慢性の下痢に対して抗生物質の使用は薦められていません。大森先生もタイロシン反応性下痢や組織球性潰瘍性大腸炎のような特殊な病気を除いては抗生物質を使ってはいけないとお話されていました。
でもね~、いるんですよね。
抗生物質を数日使うだけであっさりと下痢が治る症例。
当院でも出来るだけ抗生物質を使わないようにしてはいますが、先に書いたような詳しい血液検査や画像検査に行く前に数日抗生物質を使ってみるのはそんな悪いことではない気がします。あと多分きちんと説明をしても、費用的な面や動物の負担などから飼い主様の理解は得られないと思います。
大森先生は「安易に抗生物質を使うと抗生物質警察に捕まる」とお話されていましたが、現状ではこれからも心にチクっとしたものを感じながら飼い主様に丁寧に説明をしたうえで必要最小限で抗生物質を使っていくと思います。
下痢で当院を受診された動物の飼い主様にお願いがあります。もし治療の一環として抗生物質が処方されたとしても抗生物質警察にタレ込まないようにしてください。宜しくお願いいたします。