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時 間 午前9~12時、午後4~7時
休診日 火曜日・祝日

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犬の再発性下痢 VETS ManaViva

2024年01月12日

犬の再発性下痢というお題のwebセミナーを視聴しました。
講師は日本小動物医療センター付属小動物消化器センターの中島亘先生でした。
今回のセミナーはVETS ManaVivaというweb上のサロンのような場所で行われたセミナーで、はじめに症例のプロフィールと現在の治療が提示されて、先生ならこの先治療をどのように組み立てていきますか?という問題が出ました。数日後にサロンに参加している先生方からの回答が出揃ったところで講師の中島先生が実際にどのようにしていったかをお話するというセミナーでした。

この症例はメトロニダゾールという抗生物質を使っていると下痢は治るがやめると再発するということになっていました。
犬の慢性腸症に対する治療アプローチについては2016年にJ.R.S. Dandrieux先生が発表した方法が広く採用されていました。
Dandrieux先生が提唱した方法とは、まず食事を試して反応があれば食事反応性腸症とするが、反応が無い場合は次に抗菌薬を試してみる。ここで反応があれば抗菌薬反応性腸症とするが、反応がなければ次にステロイドを試してみる。ここで反応があればステロイド反応性腸症とするが、反応が無い場合は治療抵抗性腸症とするというやり方です。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、昨今の安易な抗菌薬使用に対する注意喚起などにもよってこの2番目に抗菌薬を使ってみるというアプローチ法について疑義が持たれるようになってきました。
そこで新たに2022年にAlbert E. Jergens先生らによって提唱された新しい慢性腸症へのアプローチでは(図ではアプローチの流れがJ.R.S. Dandrieux先生のやり方とは上下逆になってます)はじめに食事、次にステロイド、それでも反応がなければ抗菌薬という順番になっています。

 

 

 

 

 

中島先生が普段行っている低アルブミン血症なし・高リスク因子なしの慢性腸症の犬に対する治療的アプローチは1:低アレルゲン療法食→反応が悪ければ→2:別の低アレルゲン療法食あるいは繊維増強療法食→反応が悪ければ→3:内視鏡生検で慢性胃腸炎という組織診断になれば→4:プレドニゾロン+低アレルゲン療法食→効果が不十分であれば→5:数日間の抗菌薬投与という方法だそうです。抗菌薬投与が最後に来ています。

今回の症例ではメトロニダゾールという抗菌薬を内服していたので、中島先生はまずメトロニダゾールを止めてその代わりに腸内バイオームというヒルズから出ている療法食を出していました。それで下痢は治ったそうです。恐らくはメトロニダゾールは腸内の細菌叢を整えるように効いていたのだと思いますが、腸内バイオームも腸内細菌叢を整えるような効果があるので代わりに効果を発揮したのだと思います。

先生は他にも急性下痢や慢性下痢について安易な抗菌薬の使用を控えるようというようないくつかの提言や報告を紹介されていました。
また1歳未満の動物に抗菌薬を使うと将来慢性腸症を発症しやすくなるかもしれないという報告についても触れていました。
抗菌薬を安易に使うことによるリスクは理解しましたが、実際に効果が出ることもあるので難しいですね。
抗菌薬を使う場合は、飼い主様に最近の流れや抗菌薬使用についてのリスクとベネフィットをきちんとお話してから使うべきだと思いました。