TEL 042-333-0009

時 間 午前9~12時、午後4~7時
休診日 火曜日・祝日

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小児科

当院の小児科

当院ではワンちゃん・ネコちゃんとの暮らしのスタートのサポートとして小児科を設けています。
若齢期での疾患はもちろんですが、ちょっとした疑問や気になる点のサポートも行いたいと考えています。「病気だから」ではなく、「気になることがあるから」の際にご利用ください。もちろんワンちゃんネコちゃんを飼う前からの飼育相談なども歓迎しておりますので、動物を飼育しようと考えているがイヌとネコで迷っている、イヌを飼おうと思っているがどのような犬種が我が家には合っているのか相談に乗ってほしい、飼育するにあたって気を付けるべきことはないかなどお気軽に相談にいらしてください。

仔犬をお家に迎えたら

イヌには生後3週齢~12週齢位までの社会化期というものがあります。社会化期とは探索や遊びが活発になり新しい物事を受け入れやすい時期のことです。この社会化期の間にこれから10年以上の犬生の間に出会うだろう色々な人や物について好意的な体験をさせておくことが重要です。普段はあまり会わないかもしれないご老人や子供、制服を着ている人、自転車やバイクなど将来眼にするだろう人や物に慣れさせておくことで大人の犬になった時にそれらについて好意的に捕えやすくなります。もちろん、動物病院やそのスタッフに対してもです。社会化期の間にできるだけ多くの体験をさせて下さい。

仔犬の混合ワクチンが終わってないのに外出をしていいのか問題について

当院では社会化期を逃さないようにおうちに来てから数日経過したら外出をお勧めしています。外に出して病気になりませんか?との質問は良く受けます。確かに部屋の中よりも外の方が感染症に罹患する可能性は上がると思います。しかし、外に出ないと体験できないことはものすごく沢山あります。しかも社会化期が過ぎてからではその体験の効果は弱くなるばかりかよくない方向に出ることもあります。外に出ることで感染症にかかるリスクはありますが、何にも代えがたい大きな利益が得られるのです。以上のような理由でワクチン終了前であっても社会化期という大きなチャンスを逃さないように社会化期の間の外出をお勧めしています。

来院時期目安 して頂くこと 注意点
生後2か月 1回目の混合ワクチン接種
身体検査、社会化相談
この時期(生後6-8週)に1回目の予防注射を行います
身体検査や検便なども行います。生後12週までの社会化期についてよく相談します。
生後3か月 2回目の混合ワクチン 1回目の混合ワクチンから4週後に2回目の混合ワクチンを接種します。
生後4か月 3回目の混合ワクチン
ノミダニ予防・フィラリア症予防
生後16週齢を超えてから3回目の混合ワクチンを接種します。
このくらいからノミダニ対策、フィラリア症予防薬を飲んでもらいます。
生後5か月 狂犬病予防注射
歯科検診
登録と狂犬病予防注射は接種が法律で定められています。
早いと永久犬歯が生えてきます。乳歯から永久歯への交換が上手くいっているか診察します。
生後6か月 生後半年の混合ワクチン
歯科検診
生後半年での混合ワクチン接種をお勧めしています。
ほとんどの場合、このくらいの月齢までに永久犬歯が生えてきます。乳歯から永久歯への交換が上手くいっていない場合、不正咬合の予防のために抜歯をお勧めします。
生後7か月 歯科検診 生後7か月になっても乳歯が残っていると不正咬合になる確率が上がります。出来るだけ早めの残存乳歯抜歯をお勧めします。
また多くの場合7か月までに永久歯が生え揃います。
欠歯がないかどうか診察します。欠歯があれば奥にまだ生えていない歯があるかどうかレントゲン検査をします。
生後8か月以降 不妊・去勢手術 雄のマーキング予防や雌の子宮卵巣乳腺の病気を予防するために不妊・去勢手術をお勧めしています。

混合ワクチン接種

毎年、4大予防(①狂犬病予防接種、②混合ワクチン接種、③フィラリア予防、④ノミ・ダニ予防をキッチリと継続しましょう。
これらの予防はワンちゃんの健康の基本となります。

1.狂犬病予防接種

詳しくはコチラ

2.混合ワクチン接種

詳しくはコチラ

3.フィラリア予防

詳しくはコチラ

4.ノミ・ダニ予防

詳しくはコチラ

ワンちゃんの予防

1.狂犬病予防接種

狂犬病の予防注射は狂犬病予防法という法律で接種が義務付けられています。
当院でも狂犬病の予防接種をすることができます。
市区町村から届くハガキを持ってご来院ください。
(初年度登録がおすみでない場合はハガキは必要ありません)

2.混合ワクチン接種

当院では、混合ワクチン接種はWSAVA(World Small Animal Veterinary Association):世界小動物獣医師会が推奨する混合ワクチン接種に関するガイドラインに沿った形の接種をお勧めしています。
WSAVAは毎年の混合ワクチン接種を勧めていません。当院では生後半年での接種が終わった後は、コアワクチンについては1年に1回の抗体検査をノンコアワクチンについては必要に応じた毎年の接種をお勧めしています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドライングループ(VGG)は、世界中で打たれているワクチンをその重要度や必要性などによって3つのカテゴリーに分けています。

3つのカテゴリーの1番目はコアワクチンです。
WSAVAはコアワクチンを「世界中で感染が認められる重度の致死的感染症に対するワクチンであり世界中の全ての仔犬・仔猫に接種されるべきもの」と定義していて、コアワクチンには接種が法律で定められたワクチンを含むとされています。
犬のコアワクチンは、国内ではジステンパーウィルス・パルボウィルス・アデノウィルスの3種に対するワクチンと狂犬病ワクチンになります。

2番目はノンコアワクチンです。
WSAVAはノンコアワクチンを「地理的要因やライフスタイルから曝露リスクを評価し、リスクと利益の比率の考え方に基づいて接種するかどうかを個体ごとに判断するワクチン」と定義しています。
犬のノンコアワクチンはケンネルコフとレプトスピラに対するワクチンです。

3番目はワクチン接種を推奨しないワクチンです。
WSAVAはこれらを、「使用を正当化するための科学的根拠が不十分なワクチン」と定義しています。
犬コロナウィルスに対するワクチンが該当します。

またWSAVAは、不必要なワクチン接種を減らすことよりワクチン接種全体の安全性を高めることができると言っています。
つまり、不必要なワクチンを省いて接種回数を減らせば、ワクチンの副作用の発現頻度も減るだろうという考えです。

ワクチンは抗体を作るために打ちますが、そもそも抗体が足りていればワクチンは不必要ということになります。
そこで重要になるのが、免疫持続期間と抗体価測定(抗体価=抗体量と考えて下さい)です。
犬のコアワクチンの免疫持続期間は、個々の動物によって異なりますが、一般に3年以上と言われています。
つまりコアワクチンについては抗体価測定で抗体の量を測定し、十分な量があればその年のワクチン接種を省くことができる可能性が高いということになります。そうすればコアワクチンの接種回数は減らせますし、それだけ副作用の発生確率も下がります。

抗体価測定により余計なワクチン接種を省いて副作用の発現をできるだけ抑えつつ、しかも確実な予防をする。これが世界小動物獣医師会ワクチンガイドライングループが推奨する方法に沿ったワクチネーションになります。

WSAVA(World Small Animal Veterinary Association)のワクチンガイドライン
コアワクチン
コアワクチン 子犬の初年度ワクチネーション 成犬の初回ワクチネーション 再接種について
パルボウィルス 6~8週齢で接種、その後2~4週ごとに16週齢以降まで接種。 製造業者による推奨は2~4週間間隔で2回接種であるが、弱毒生ワクチンは1回接種で効果があると考えられている。 6か月(推奨)または1歳齢で再接種、その後は3年毎以下の頻度では接種しない。
ジステンパーウィルス
アデノウィルス(1型、2型)
ノンコアワクチン
ワクチン 子犬の初年度ワクチネーション 成犬の初回ワクチネーション 再接種について コメントと推奨事項
パラインフルエンザウィルス 6~8週齢で接種、その後2~4週ごとに16週齢以降まで接種。 製造業者による推奨は2~4週間間隔で2回接種であるが、弱毒生ワクチンは1回接種で効果があると考えられている。 6か月(推奨)または1歳齢で再接種、その後は年1回で接種 上部気道が主要な感染部位であるため、注射剤よりも鼻腔内投与が望ましい
ボルデテラ 現時点では、製造業者は8週齢以降の接種を推奨している。 1回接種 年1回接種。
年1回の接種では防御されない極めて高リスクな動物についてはそれを上回る頻度で接種。
鼻腔内投与
レプトスピラ 8週齢以降に初回接種。その2~4週後に2回目の接種。 2~4週間間隔で2回接種。 年1回接種。 ワクチン接種は明確な暴露リスクが確認されている地域での使用、またはライフスタイルにより重大なリスクがある犬への使用に限定する。
本ワクチンは防御効果が弱く、効果持続時間が短いことが知られているので、年1回接種しなければならない。
犬用ワクチンに対する免疫をモニターするための血清学的検査(抗体検査)について

抗体陰性であれば感染症に対して感受性がある可能性があるが、抗体陽性であればワクチン再接種の必要はない

ワクチンで予防できる病気
ワクチンで予防できる病気 詳細 カテゴリー
ジステンパーウィルス感染症 主な症状は消化器症状、発熱、神経症状で死亡率は高い コアワクチン
パルボウィルス感染症 主な症状は消化器症状で死亡率が高い コアワクチン
伝染性肝炎 アデノウィルス1型の感染症で症状は発熱や肝機能障害。死亡率は高いが、国内での発生は稀です。ワクチンにはアデノウィルス2型のワクチン株が入っています。 コアワクチン
アデノウィルス2型感染症 症状は咳などで比較的軽め。ケンネルコフなどと言われることもあります。 コアワクチン
パラインフルエンザウィルス感染症 症状は咳などで比較的軽め。ケンネルコフなどと言われることもあります。 ノンコアワクチン
ボルデテラ感染症 症状は咳などで比較的軽め。ケンネルコフなどと言われることもあります。 ノンコアワクチン
レプトスピラ感染症 スピロヘータの1種であるレプトスピラによる感染症でヒトと動物の共通感染症。重症化すると亡くなる(ヒトも)こともあります。レプトスピラに触れたり口からの摂取によって感染します。 ノンコアワクチン

アデノウィルスについては1型(伝染性肝炎)と2型(咳を主な症状とします)の2つのタイプの感染症がありますが、国内には1型に対する純粋なワクチンは存在しません。
WSAVAはアデノウィルス1型感染症予防のためにはアデノウィルス2型ワクチンの注射を勧めていますが、アデノウィルス2型感染症予防のためにはアデノウィルス2型感染症ワクチンの鼻腔内投与を勧めています。ちょっと難しいですね。

3.フィラリア予防(犬糸状虫症)

フィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊の媒介によって犬糸状虫Dirofilaria immitisが感染し、循環障害や呼吸器の症状を表す病気です。犬の場合、薬による予防はほぼ100%可能ですが、予防薬の効果は犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫が筋肉などで発育している間に駆除するものであり、感染そのものを防ぐものではありません。よってフィラリア予防薬は感染予防薬ではなく発症予防薬になりますが、体内に侵入した幼虫を定期的に殺虫・駆除していれば体内でフィラリアが増えていくことはありません。
フィラリア予防薬は体内に侵入した幼虫の殺虫薬ですから予防薬を蚊が出る前から飲む必要はありません。蚊が出始めたら飲むようにしてください。飲み終わりは蚊を見なくなってから1回飲んで終了になります。

4.ノミ・ダニ予防薬

ノミは体長約2~2.5mmほどの吸血性の昆虫です。種類は多いのですがイヌに最もよく見られる種類はネコノミ(Ctenocephalides felis)です。ノミは人にも寄生し吸血します。ノミに理想的な環境下では2週間程度で卵から成虫になりますが、環境が悪いと卵やサナギの状態で2年生きていることもあります。成虫の寿命は10-20日で、メスノミは1日約20個、一生の間に多いと約400個卵を産みます。ネコノミの成虫は一旦寄生するとあまり移動はしません。寄生主から落ちたり離れると約4日以内で死んでしまうので屋外で単独では生活できません。
犬がノミに刺されると、ノミの唾液などをアレルゲンとするノミアレルギー性皮膚炎になることがあります。症状は強い痒みです。
ノミ寄生対策としては、各種スポットオン製剤(フィプロニル製剤など)や内服薬(イソキサゾリン系など)などの駆虫薬があります。

マダニは8本脚からなる節足動物で、昆虫ではなくクモやサソリに近い生き物です。一般に家の中に住むダニ(イエダニやハダニ)とは違って固い外皮に覆われています。日本に分布するマダニのうち、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生します。
マダニの唯一の栄養源は、動物の血液です。幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。その吸血の際にウィルスや細菌などさまざまな病原体の重要な媒介者となることがあります。
マダニは、幼ダニ期から若ダニ期にかけて2度の脱皮をへて成長し、成ダニ期を迎えます。発育期ごとに異なる宿主動物へ寄生・吸血するマダニを「3宿主性マダニ」と呼び、すべてのマダニ種のうちのほとんどが3宿主性マダニです。一生の中で吸血する期間は20~25日間ほどといわれ、他の期間は脱皮や産卵、動物へ寄生する機会を待ちながら自然環境のなかで生活しています。
吸血と脱皮を繰り返して成ダニへと成長したマダニは自然環境の中で寄生主となる動物(時にヒト)が近づくのをじっと待っています。動物がマダニの近くを通過する際に体熱や二酸化炭素、振動などを感知してすばやく乗り移ります。成ダニは約1~2週間かけて吸血をします。吸血によって満腹になったメスマダニは、地上に落下して2~3週間の間に2,000個~3,000個の卵を産み、その生涯を終えます。

マダニが媒介する伝染病の中にSFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome重症熱性血小板減少)症候群があります。
SFTS症候群とは、SFTSウィルスを持つマダニに咬まれることで感染する動物と人の共通感染症ですが、過去にはSFTSウィルスに感染した動物の体液(血液や唾液など)との接触による感染も報告されています。主な症状は発熱と消化器症状(おう吐、下痢など)が中心で、倦怠感、リンパ節の腫れ、出血症状なども見られます。致死率は6~30%といわれています。
感染症法で四類感染症に定められているような感染症であることや、2017年には厚生労働省から重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関わる注意喚起についてとの通知がでたこと、昨今のマダニ寄生機会の増加などから定期的なマダニ駆除剤の投与をお勧めしています。

マダニ駆除剤には各種スポットオン製剤(フィプロニル製剤など)や内服薬(イソキサゾリン系など)などの駆虫薬があります。

去勢手術・不妊手術について

動物のご家族は飼育する動物の健康と生命について責任を負うことになります。そのことを自覚して頂いたうえでご家族で不妊・去勢手術についてよく相談し方針を決めてあげて下さい。
分からないことがあればいくらでも説明します。動物病院はそのためにありますので、手術についての不安な気持ちやわからないことなど何でも相談してください。
ただ、手術した動物を元に戻すことはできません。ご家族でよく話し合って方針を決めて下さい。

2010年1月~2012年12月までに動物病院に来院した約237万頭の犬について調べた、犬の寿命に関連するリスク因子についての調査(Journal of American Animal Hospital Association 2019, Silvan R. Urfer)によると、不妊手術を受けていない雌犬の平均寿命は13.77歳だったのに対し、不妊手術を受けている雌犬の平均寿命は14.09歳、去勢手術を受けていない雄犬の平均寿命は14.15歳だったのに対し、去勢手術を受けている雄犬の平均寿命は14.35歳(p<0.001)と差は微妙ですが、不妊手術にしても去勢手術にしても受けている犬の方が少し寿命が長くなっていると報告されています。

将来的に繁殖を考えていない場合には、将来発生する病気のリスクを軽減することを目的として、去勢手術・不妊手術をお勧めしています。去勢手術・不妊手術には、望まない繁殖を防ぐ以外にも下記のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

避妊手術
(女の子)

①特有の行動の減少
発情時特有の神経質な状態や鳴き声の減少、出血がなくなります。

②病気の予防(乳腺腫瘍・子宮蓄膿症)乳腺腫瘍の発生率の調査によると、初回発情前に不妊手術を行うと将来の乳腺腫瘍の発生率が1/200以下に低下し初回発情から2回目の発情まででは1/12.5に低下すると報告されています。子宮蓄膿症は中年齢以降の不妊手術を受けていない雌犬に発症する病気です。

去勢手術
(男の子)

①縄張り意識の減少
マーキングやマウンティング、攻撃性の減少が期待できます。

②病気の予防(前立腺肥大、前立腺膿瘍、会陰ヘルニア、精巣腫瘍、肛門周囲腺腫):中年齢以降の未去勢の雄犬に多く発症します。

犬の子宮蓄膿症について

子宮蓄膿症は、子宮の化膿性疾患で子宮内膜の嚢胞性増殖、細菌増殖および子宮内滲出液の貯留を特徴とします。不妊手術をしていない中~高齢の雌犬に発生する一般的な病気です。


腹部超音波画像です。子宮蓄膿症によって子宮内に膿を溜めています。拡張した子宮が見えています。


実際に子宮は拡張して中に膿を溜めていました。

家庭で気が付く症状には、多飲多尿(水を沢山飲んでおしっこを沢山する)、軽度から重度の食欲不振、陰部からのおりもの、腹囲膨満(お腹が張る)などがありますが、これら全てが見られるわけではありません。
初期に気がついて適切な治療を行なうことで治ることが多い病気ですが、無治療で放置するとほとんどの場合残念ながら亡くなってしまいます。

治療には内科治療と外科治療があります。内科治療は、外科治療までの間に体調を改善させる目的で行なわれたり重度の心臓病などで麻酔がかけられない動物に行われますが、病気が治ることは普通ありません。よって一般的には外科治療が選択されます。しかし、病気の動物に麻酔をかけて手術することになりますので、健康な動物に行なわれる手術よりもリスクは高くなりますし、術後の回復にも時間がかかります。また、手術は無事に終わっても既に受けてしまった子宮蓄膿症の悪影響によって残念ながら亡くなってしまうこともありますし、わんちゃんの全身状態によっては麻酔をかけることさえも困難な場合もあります。
病気になってからこのままでは亡くなってしまうというような危険な状態でリスクを抱えてまさに命懸けの手術をしなければいけなくなってしまったり、手術の後も子宮蓄膿症の悪影響で生死の境をさまようような状態にさせないためには病気の予防をしておくことが不可欠であり、長くわんちゃんに健康で生活してもらうために必要なことだと思われます。
子宮蓄膿症はDICという血液凝固異常を呼びやすい病気なので注意が必要です。

DIC(血管内播種性凝固:Disseminated Intravascular Coagulation)について

DICとは悪性腫瘍(血管肉腫など)や重度の細菌感染症(子宮蓄膿症など)などの基礎疾患が原因で起こる血液凝固異常のことです。
DICの定義は、様々な基礎疾患により全身の細小血管内に汎発性の微小血栓形成が生じる病態・症候群とされていて、その本質は全身性でかつ持続性の著しい血液凝固活性化です。またDICはその高い致死率が特徴的で、preDICという初期の段階で基礎疾患の治療とDICの治療が成功すれば救命は可能ですが、治療が遅れると救命は難しくなります。

診断

血液検査でTAT、AT活性、D-dimerなどの値をみて総合的に現在の血液凝固状態を把握します。

治療

基礎疾患の治療は不可欠ですが、DICの治療として抗凝固療法、輸血による凝固因子の補充などが行われます。

デメリット

共通 エネルギー代謝が落ち太り易くなります。
・手術前に比べ、20~30%もエネルギー代謝が落ちるといわれています。
・食事や運動といった管理で体重を維持することが必要になります。

手術のタイミングについて

不妊手術
(女の子)
生後7~8ヶ月程度で手術を行います。
初回の発情まで、または初回と2回目の発情の間までに行うことが理想的です。
去勢手術
(男の子)
生後7~8ヶ月程度で手術を行います。
性成熟がくる時期やマーキングを始める時期がこれくらいの時期と言われているためです。

乳歯遺残について

時期の目安 注意点
生後
7ヶ月目
【乳歯遺残のチェック】
仔犬の切歯は4か月までに犬歯は6か月までに生え変わります。6か月を過ぎても乳歯が残っていたら乳歯の抜歯をお勧めします。
詳しくはコチラ

若い頃から健康診断の受診を

健康な時期の検査数値を把握しておきましょう

若い頃から定期的に健康診断を受けておくと、健康な時期の検査数値を把握しておくことができます。教科書などに記載のある「標準的な検査数値の範囲」は存在しますが、動物個々でその正常値が異なります。健康時のデータを把握していればその子の適正範囲が分かりますので、異常があった場合にも安心です。

健康診断に慣れておきましょう

血液検査、エコー検査、レントゲン検査など、ワンちゃんの健康状態を調べる検査はたくさんあります。
7歳以上の高齢期になると病状によって色々な検査を行う必要が出て来ます。高齢になって初めて行う検査ばかりですと、ワンちゃんの負担も大きくなります。
若い頃からある程度検査に慣れておくと、シニア期の検査を行う際にも安心です。

先天性の病気の早期発見を

1~6歳までの時期は、「愛犬が病気にならないと動物病院に行かない」ということも多いと思います。
しかし、稀に若いうちから何らかの病気が発症していたり、飼い主さんが気づかないうちに病気が進行している場合もあります。また、6歳を過ぎたころから何らかの病気になる可能性もぐんと上がります。
6歳を過ぎたら、年に1度の健康診断を受けましょう。

フィラリア時期などを活用しましょう

健康診断だけ受診いただくこともできますが、採血や検査はワンちゃんの負担になることもあります。
当院では春のフィラリア時期や秋の健診時期などで、年間2回程度、お得に受診いただける機会を設けております。そういった機会などを上手に活用してください。

子猫をお家に迎えたら

猫は選好性の強い動物で、仔猫の頃の体験が大人になってからの生活に強く影響をしてきます。仔猫の頃に食べた食餌や知り合った動物や人などは比較的受け入れやすくなりますが、仔猫の頃に体験していない物事には興味を示さないことがあります。小さいうちに出来るだけ多くの経験を積ませるようにしてあげてください。
ちなみに周りの出来事を好意的に捕えやすい社会化期は生後9週齢までとなっています。

予防時期 予防項目
生後2か月 1回目の混合ワクチン接種 検便・身体検査 外部寄生虫・内部寄生虫の駆除 生後6-8週で1回目の混合ワクチンを接種します
生後3か月 2回目の混合ワクチン接種
生後4か月 3回目の混合ワクチン接種 生後16週齢を過ぎたら3回目の混合ワクチンを接種します
生後6か月 6か月齢の混合ワクチン接種
生後7か月以降 去勢・不妊手術 繁殖を望まない場合は、去勢不妊手術をお勧めしています。

ネコちゃんの予防

毎年、3大予防(①混合ワクチン接種、 ②ノミ・ダニ、寄生虫予防、③フィラリア予防、)をキッチリと継続しましょう。
これらの予防は猫ちゃんの健康の基本となります。

1.混合ワクチン接種

詳しくはコチラ

2.ノミ・ダニ、寄生虫予防

詳しくはコチラ

3.フィラリア予防

詳しくはコチラ

1.混合ワクチン接種

当院では、混合ワクチン接種はWSAVA(World Small Animal Veterinary Accosiation):世界小動物獣医師会が推奨する混合ワクチン接種に関するガイドラインに沿った形の接種をお勧めしています。

WSAVAの猫に対するワクチネーションガイドライン 猫
ワクチン 子猫の初年度ワクチネーション 成猫の初回ワクチネーション 再接種について
猫汎白血球減少症ウィルス(パルボウィルス) 生後6~8週齢で接種、その後2~4週ごとに16週齢以降まで接種 製造業者による推奨は2~4週間間隔で2回接種であるが、弱毒生ワクチンは1回接種で効果があると考えられている。 生後6か月齢(推奨)または1歳齢で再接種する。
その後は3年毎以下の頻度では接種しない。
猫ヘルペスウィルス1型 生後6~8週齢で接種、その後2~4週ごとに16週齢以降まで接種 通常は2~4週間間隔での2回接種が推奨される。 生後6か月齢(推奨)または1歳齢で再接種する。
低リスクの猫についてはその後は3年毎以下の頻度では接種しない。
高リスクの猫については年1回の再接種を実施する。
猫カリシウィルス

WSAVAはパルボウィルス、猫ヘルペスウィルス1型、猫カリシウィルスに対するワクチンをコアワクチンとしています。

コアワクチンとは「世界中で感染が認められる重度の致死的感染症に対するワクチンであり世界中の全ての仔犬・仔猫に接種されるべきもの」です。(WSAVAガイドラインより)

当院では、猫の混合ワクチンを毎年接種するようにお勧めしてはいません。
毎年の接種の替わりに1年に1回のパルボウィルスの抗体検査をお勧めしています。

2.ノミ・ダニ、寄生虫予防

ノミは体長約2~2.5mmほどの吸血性の昆虫です。種類は多いのですがイヌに最もよく見られる種類はネコノミ(Ctenocephalides felis)です。ノミは人にも寄生し吸血します。ノミに理想的な環境下では2週間程度で卵から成虫になりますが、環境が悪いと卵やサナギの状態で2年生きていることもあります。成虫の寿命は10-20日で、メスノミは1日約20個、一生の間に多いと約400個卵を産みます。ネコノミの成虫は一旦寄生するとあまり移動はしません。寄生主から落ちたり離れると約4日以内で死んでしまうので屋外で単独では生活できません。
犬がノミに刺されると、ノミの唾液などをアレルゲンとするノミアレルギー性皮膚炎になることがあります。症状は強い痒みです。
ノミ寄生対策としては、各種スポットオン製剤(フィプロニル製剤など)や内服薬(イソキサゾリン系など)などの駆虫薬があります。

マダニは8本脚からなる節足動物で、昆虫ではなくクモやサソリに近い生き物です。一般に家の中に住むダニ(イエダニやハダニ)とは違って固い外皮に覆われています。日本に分布するマダニのうち、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生します。
マダニの唯一の栄養源は、動物の血液です。幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。その吸血の際にウィルスや細菌などさまざまな病原体の重要な媒介者となることがあります。
マダニは、幼ダニ期から若ダニ期にかけて2度の脱皮をへて成長し、成ダニ期を迎えます。発育期ごとに異なる宿主動物へ寄生・吸血するマダニを「3宿主性マダニ」と呼び、すべてのマダニ種のうちのほとんどが3宿主性マダニです。一生の中で吸血する期間は20~25日間ほどといわれ、他の期間は脱皮や産卵、動物へ寄生する機会を待ちながら自然環境のなかで生活しています。
吸血と脱皮を繰り返して成ダニへと成長したマダニは自然環境の中で寄生主となる動物(時にヒト)が近づくのをじっと待っています。動物がマダニの近くを通過する際に体熱や二酸化炭素、振動などを感知してすばやく乗り移ります。成ダニは約1~2週間かけて吸血をします。吸血によって満腹になったメスマダニは、地上に落下して2~3週間の間に2,000個~3,000個の卵を産み、その生涯を終えます。

マダニが媒介する伝染病の中にSFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome重症熱性血小板減少)症候群があります。
SFTS症候群とは、SFTSウィルスを持つマダニに咬まれることで感染する動物と人の共通感染症ですが、過去にはSFTSウィルスに感染した動物の体液(血液や唾液など)との接触による感染も報告されています。主な症状は発熱と消化器症状(おう吐、下痢など)が中心で、倦怠感、リンパ節の腫れ、出血症状なども見られます。致死率は6~30%といわれています。
感染症法で四類感染症に定められているような感染症であることや、2017年には厚生労働省から重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関わる注意喚起についてとの通知がでたこと、昨今のマダニ寄生機会の増加などから定期的なマダニ駆除剤の投与をお勧めしています。

マダニ駆除剤には各種スポットオン製剤(フィプロニル製剤など)や内服薬(イソキサゾリン系など)などの駆虫薬があります。

3.フィラリア予防

猫ちゃんも蚊に刺されるとフィラリア症になることがあります。予防薬で予防ができる病気です。予防薬にはスポットオンのフィラリア予防薬があります。

ネコちゃんにお勧めしている検査

1.ウイルス検査

ウイルス検査では、① 猫免疫不全ウイルス(FIV) ② 猫白血病ウイルス(Felv)という2つの感染症を調べることができます。感染の有無を調べておくことをお勧めしています。採血をするだけで検査が可能ですので、小さな子猫でも安心して検査を受けていただけます。潜伏期間があるため、2回検査することをお勧めします。

  • 外に遊びに行く子(少しでも)
  • 昔、外猫だった子
  • お母さん猫が外猫の子
  • 過去の飼育環境がわからない子
  • 多頭飼いの猫ちゃん達の中に1頭でもこれらに当てはまる子がいる場合
2.尿検査

ネコちゃんは腎泌尿器の病気にかかりやすい動物です。そのため最低年に1回は尿検査をして頂きたいと考えています。尿検査は内臓の状態を知ることが出来るとても良い検査です。しかも怖がりのネコちゃんにストレスを掛けずに検査が可能です。尿検査を行う際は出来るだけ新鮮な尿をお持ちください。事前にお声掛け頂ければ採尿用の試験管やシリンジをご用意いたします。

尿検査項目 その検査結果から考慮すべき病気や鑑別すべき病気
比重 慢性腎臓病、尿崩症
潜血 腎出血、尿路結石、膀胱炎、腫瘍、貧血
ビリルビン 肝臓疾患、胆道疾患、貧血
蛋白質 腎臓病、高血圧、細菌感染
ブドウ糖 糖尿病、ファンコーニ症候群
pH 膀胱結石、細菌感染

去勢・不妊手術について

動物のご家族は飼育する動物の健康と生命について責任を負うことになります。そのことを自覚して頂いたうえでご家族で不妊・去勢手術についてよく相談し方針を決めてあげて下さい。
分からないことがあればいくらでも説明します。動物病院はそのためにありますので、手術についての不安な気持ちやわからないことなど何でも相談してください。
ただ、手術した動物を元に戻すことはできません。ご家族でよく話し合って方針を決めて下さい。

当院は、基本的には不妊・去勢手術を推奨しています。

2010年1月~2012年12月までに動物病院に来院した約237万頭の犬について調べた、犬の寿命に関連するリスク因子についての調査(Journal of American Animal Hospital Association 2019, Silvan R. Urfer)によると、不妊手術を受けていない雌犬の平均寿命は13.77歳だったのに対し、不妊手術を受けている雌犬の平均寿命は14.09歳、去勢手術を受けていない雄犬の平均寿命は14.15歳だったのに対し、去勢手術を受けている雄犬の平均寿命は14.35歳(p<0.001)と差は微妙ですが、不妊手術にしても去勢手術にしても受けている犬の方が少し寿命が長くなっていると報告されています。

メリットとデメリット

メリット ・生殖器の病気を防ぐことが出来る
・望まない繁殖を防ぐ
・マーキングや発情を防ぐ
・発情期のストレスを防ぐ
デメリット ・太りやすい体質になりやすい
・全身麻酔をするため、麻酔のリスクが伴う

手術のタイミングについて

不妊手術
(女の子)
生後7-10カ月程度での手術をお勧めしています。7か月よりも前に発情が来た場合には相談させてください。
去勢手術
(男の子)
生後7-10カ月程度での手術をお勧めしています。7か月より前にスプレー行為が見られた場合は相談させてください。

若い頃から健康診断の受診を

健康な時期の検査数値を把握しておきましょう

若い頃から定期的に健康診断を受けておくと、健康な時期の検査数値を把握しておくことができます。教科書などに記載のある「標準的な検査数値の範囲」は存在しますが、動物個々でその正常値が異なります。健康時のデータを把握していればその子の適正範囲が分かりますので、異常があった場合にも安心です。

健康診断に慣れておきましょう

血液検査、エコー検査、レントゲン検査など、ネコンちゃんの健康状態を調べる検査はたくさんあります。10歳以上の高齢期になると病状によって色々な検査を行う必要が出て来ます。
高齢になって初めて行う検査ばかりですと、ネコンちゃんの負担も大きくなります。
若い頃からある程度検査に慣れておくと、シニア期の検査を行う際にも安心です。

健診キャンペーン時期を活用してください

健康診断だけ受診いただくこともできますが、採血や検査はネコちゃんの負担になることもあります。
当院では春や秋の健診時期などで、年間2回程度、お得に受診いただける機会を設けております。
そういった機会などを上手に活用してください。

お手入れ習慣を身につけましょう

ネコちゃんの中には身体を触られることを嫌がる子も多くいます。
若い頃からスキンシップを兼ねてお手入れなどを行う中で、全身を触れられることに慣れさせていきましょう。

1.全身に異常がないかチェック

スキンシップを兼ねて全身を触って細かくチェックしたり、普段の行動を観察して異常がないか確認をしましょう。

  • 元気(動き、歩き方、鳴き方など)
  • 食欲(食べる量)
  • 飲水(水を飲む量)
  • 排便(回数・状態)
  • 排尿(回数、色)
  • 被毛や皮膚の異常(傷、痛み、しこり)
  • 耳、目、鼻の状態の観察
  • 口の中のにおい(嫌な臭いは異常のサイン)
2.全身のブラッシング

毛球症(もうきゅうしょう)とは毛づくろいをしたときに少しずつ飲み込んだ毛が胃で塊になり、胃や腸でさまざまな症状を起こす病気です。毛は体内で消化されません。

3.耳掃除は控えめに

ご家庭での耳掃除は濡れたコットンを使って表面を優しく拭く程度にしてください。
綿棒を使用すると傷がついてしまったり、痛がって嫌がるようになります。

4.痛みのサインについて

猫は症状を隠そうとしがちです。また、痛みを行動で訴えることがあります。性格により異なりますが、『いつもと違う』と感じたら、その他の症状や原因となるものがないかよく観察し、ご相談ください。

  • 落ち着かない
  • 攻撃的になる
  • うずくまる
  • 特定の部位をしきりに舐める
  • 呼吸が早い
  • 隠れる
  • 食欲がなくなる

病院への連れて行き方

キャリーバッグに入れてお連れ下さい

逃走防止・猫ちゃんの過ごしやすさを考慮して、キャリーバッグに入れてご来院ください。

怒る子は網目が荒い洗濯ネットを活用しましょう

キャリーが苦手、怒る子は、洗濯ネット(サイズが大きい網目が荒いもの)に入れてお連れ下さい。

バスでお越しの場合

猫ちゃんは怖がりな生き物です。
目隠しの毛布などをかけてあげましょう。

お車でお越しの場合

車内で安全に過ごせるように、
キャリーバッグはシートベルトでしっかり固定をしましょう。写真のようにすると安心です。

ネコちゃんは室内飼育をお勧めします

寄生虫や感染症(ノミ・ダニ・ウィルス病)

ノミはすでにノミが寄生している他のネコからやってきます。ノミに刺されることでアレルギー症状として強い痒みがでます。マダニは自然環境に生息しているので屋外の草むらなどで寄生します。ネコは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する感受性が高い動物です。ノラネコからヒトへの感染が報告されていますので外出するネコちゃんについては十分な注意が必要です。
他のネコとの接触やケンカ(咬み傷)により以下のような感染症に感染することがあります。

ノミは体長約2~2.5mmほどの吸血性の昆虫です。種類は多いのですがネコに最もよく見られる種類はネコノミ(Ctenocephalides felis)です。ノミは人にも寄生し吸血します。ノミに理想的な環境下では2週間程度で卵から成虫になりますが、環境が悪いと卵やサナギの状態で2年生きていることもあります。成虫の寿命は10-20日で、メスノミは1日約20個一生の間に多いと約400個卵を産みます。ネコノミの成虫は一旦寄生するとあまり移動はしません。寄生主から落ちたり離れると約4日以内で死んでしまうので屋外で単独では生活できません。
ネコがノミに刺されると、ノミの唾液などをアレルゲンとするノミアレルギー性皮膚炎になることがあります。症状は強い痒みです。
ノミ寄生対策としては、各種スポットオン製剤(フィプロニル製剤など)や内服薬(イソキサゾリン系など)などの駆虫薬があります。

マダニは8本脚からなる節足動物で、昆虫ではなくクモやサソリに近い生き物です。一般に家の中に住むダニ(イエダニやハダニ)とは違って固い外皮に覆われています。日本に分布するマダニのうち、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生します。
マダニの唯一の栄養源は、動物の血液です。幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。その吸血の際にウィルスや細菌などさまざまな病原体の重要な媒介者となることがあります。
マダニは、幼ダニ期から若ダニ期にかけて2度の脱皮をへて成長し、成ダニ期を迎えます。発育期ごとに異なる宿主動物へ寄生・吸血するマダニを「3宿主性マダニ」と呼び、すべてのマダニ種のうちのほとんどが3宿主性マダニです。一生の中で吸血する期間は20~25日間ほどといわれ、他の期間は脱皮や産卵、動物へ寄生する機会を待ちながら自然環境のなかで生活しています。
吸血と脱皮を繰り返して成ダニへと成長したマダニは自然環境の中で寄生主となる動物(時にヒト)が近づくのをじっと待っています。動物がマダニの近くを通過する際に体熱や二酸化炭素、振動などを感知してすばやく乗り移ります。成ダニは約1~2週間かけて吸血をします。吸血によって満腹になったメスマダニは、地上に落下して2~3週間の間に2,000個~3,000個の卵を産み、その生涯を終えます。

マダニが媒介する伝染病の中にSFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome重症熱性血小板減少)症候群があります。
SFTS症候群とは、SFTSウィルスを持つマダニに咬まれることで感染する動物と人の共通感染症ですが、過去にはSFTSウィルスに感染した動物の体液(血液や唾液など)との接触による感染も報告されています。主な症状は発熱と消化器症状(おう吐、下痢など)が中心で、倦怠感、リンパ節の腫れ、出血症状なども見られます。致死率は6~30%といわれています。
感染症法で四類感染症に定められているような感染症であることや、2017年には厚生労働省から重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関わる注意喚起についてとの通知がでたこと、昨今のマダニ寄生機会の増加などから定期的なマダニ駆除剤の投与をお勧めしています。

マダニ駆除剤には各種スポットオン製剤(フィプロニル製剤など)や内服薬(イソキサゾリン系など)などの駆虫薬があります。

猫白血病ウィルス(FeLV)感染症について

FeLV感染猫は唾液や鼻汁、尿、糞便、乳汁中にウィルスを排泄しますが、主に毛づくろいや共同での飲食、咬傷によって感染します。
ウィルスは、口腔咽頭で増殖し、次に骨髄細胞に感染し全身に広がります。
ウィルスに感染するかどうかは、猫の年齢、免疫状態、ウィルスの感染力やウィルス量によります。
新生子がウィルスに暴露された場合80~100%の確率で持続感染が成立するが、3か月を超えると感染率は25%に減少し、1歳になると持続感染はほとんど成立しません。
感染した猫の多くは、免疫不全、リンパ腫、白血病などを発症し4年以内に亡くなります。

診断

FeLV感染症の診断は、ウィルス抗原の検出によって行われます。
感染初期(4-6週)では、ウィルス抗原が検出されないので検査が陰性だった場合、30日後の再検査が推奨されています。
また、骨髄細胞にウィルス遺伝子が組み込まれている場合もウィルス抗原検査では陽性に出ないので、末梢血の白血球や骨髄の中に存在するプロウィルスをPCR法にて測定します。
PCR法は抗原検査より7倍検出感度が高いとの報告もあります。

予防

FeLVは発病するとウィルスの排除が困難になるため、治療よりも予防が重要となります。
猫を室内飼育にしてFeLV感染猫との接触を防いだり、新しく猫を導入する際はFeLV感染の有無についてよく調べてから導入することでFeLV感染を予防します。

猫免疫不全ウィルス(FIV)感染症について

猫免疫不全ウィルス(FIV)感染症は唾液中に排泄され、咬傷により感染します。
同居猫との感染も稀にはあります。FIV感染猫と非感染猫を2年間同居させた研究によると、非感染猫20頭中1頭に感染が確認されたと報告されています。
危険因子として、屋外にいる雄猫、屋外の猫と接触のある猫、去勢されてない雄猫(喧嘩による咬傷)、高密度で飼育されている猫、頻繁に猫を入れ替えて多頭飼育されている猫があげられています。

症状

FIVで最も一般的な症状は、口内炎、歯肉炎、再発性の鼻炎-結膜炎、進行性の体重減少、下痢、発熱です。
FIV感染は、急性期から長い無症候期を経て最終的に免疫不全に陥る感染症です。
急性期:感染4-6週間後の初期のウィルス血症に関連した症状で、一過性の発熱、リンパ節の腫大などがみられます。
無症候期:持続的なリンパ節腫大(数年間)
免疫不全期:長い無症候期を経て免疫不全状態になると、感染猫は慢性再発性の日和見感染や、数カ月から数年におよぶ悪化と消耗を示す慢性的な炎症疾患にかかりやすくなります。
口内炎、歯肉炎、歯周炎や化膿性鼻炎や結膜炎、肺炎や膿胸、下痢、皮膚炎、化膿性外耳炎が免疫不全によって引き起こされます。

診断

FIV感染の診断は、血清中の抗体をELISA法、免疫蛍光抗体法、ウェスタンブロット法などを用いて検出することによって行われます。ただし、6か月齢未満の若齢猫については母猫からの移行抗体が残っている場合があるので擬陽性になることもあります。
抗体産生は感染から4-6週でおこります。よって6か月齢以上の猫でFIV抗体検査が陰性で出た場合、最後のFIV感染の可能性のある日から60日後にもう一度抗体検査を行います。
6か月齢未満の猫で抗体が確認された場合、6か月齢以降にもう一度抗体検査を行います。
FIVワクチン接種によっても抗体は陽性になりますので注意が必要です。

猫パルボウィルス感染症(猫汎白血球減少症)

猫パルボウィルス感染症は古くから猫汎白血球減少症と言われています。感染猫の症状は不顕性感染から急性死と様々ですが、一般的には若い猫において重症度が高くなっています。パルボウィルスにより細胞分裂の盛んな骨髄(特に白血球系細胞の元になる細胞)がダメージを負うことによって血液中の白血球が少なくなります。骨髄以外にも細胞分裂の盛んな小腸粘膜細胞がダメージを負うことによって激しい消化器症状が見られます。また母猫の感染により胎子の小脳が侵されて小脳症状(測定過大、企図振戦)が見られたり、若齢猫の心筋が侵されて心筋炎によって急死することもあります。猫パルボウィルス感染症の感染後の潜伏期間は約7日で、発症すると突然の食欲廃絶、嘔吐、下痢、発熱、脱水などの症状が見られます。
診断は突然の食欲廃絶や消化器症状とワクチン接種歴に加えて著しい汎白血球減少症によって行います。パルボウィルスの抗原検査や抗体検査が行われることもあります。
治療は輸液療法や抗菌薬治療、制吐治療が中心になりますが、6か月齢未満の子猫が感染した場合の救命率は非常に低くなっています。
猫パルボウィルス感染症はとても怖い病気ですが、混合ワクチンによる発症率の低下や重症化の予防が期待できますので混合ワクチン接種をお願いします。

猫ウィルス性鼻気管炎

猫ウィルス性鼻気管炎は多因子性の猫の上部気道感染症の一部として比較的よく見られ、猫ヘルペスウィルス1型によって引き起こされる病気です。
主な感染経路は経口、経鼻、経粘膜感染で、体内に侵入したウィルスは鼻腔、鼻甲介、鼻咽頭、扁桃粘膜で増殖し、結膜、気管、気管支、細気管支に広がって発症します。回復した猫のほとんどでウィルスのキャリアとなります。キャリアとなった猫が何らかのストレスを受けたり免疫抑制治療を受けた時などにウィルスの排泄がおこります。
症状は、沈鬱、食欲不振、くしゃみ、鼻水、涙、眼ヤニ、よだれなどですが、しばしば結膜炎や潰瘍性角膜炎などの目の症状を表すことがあります。
診断は呼吸器や結膜炎などの症状とPCR検査によるウィルス検査や血清学的検査によって行われます。
治療としては全身的な抗ウィルス薬の投与や抗菌剤の投与、眼や鼻の症状があれば局所への点眼点鼻薬の投与、食欲が落ちている猫には栄養支持療法が行われます。
若齢猫免疫不全状態の猫では死亡率が高くなる病気ですが、一般的な死亡率はそこまで高くありません。
混合ワクチン接種によって重症化の予防が期待できますので、ワクチン接種をお願いします。

猫カリシウィルス感染症

猫カリシウィルス感染症は猫ウィルス性鼻気管炎とともに猫上部気道感染症という多因子性疾患の一部として多く認められます。
猫カリシウィルス感染症自体の症状は、くしゃみ、鼻水、よだれなどで猫ヘルペスウィルス1型感染症である猫ウィルス性鼻気管炎とよく似ています。口腔内粘膜や舌に潰瘍を作ることがあるので、口腔内に潰瘍があれば猫カリシウィルス感染症を疑います。関節炎を起こして跛行が認められることもあります。
発症している猫だけでなく、感染から回復した猫や不顕性感染猫も長期間ウィルスを排泄します。排泄されたウィルスは常温で1か月以上感染性を維持すると言われています。感染は猫から排泄された分泌物などに含まれるウィルスが、経口、経鼻、経粘膜的に侵入することで成立します。侵入後のウィルスの増殖は主に鼻腔、口腔、呼吸器で増殖しますが、時に関節の滑膜で増殖することがあります。
診断はくしゃみ、鼻水、よだれ、跛行などの症状から猫カリシウィルス感染症を疑って、PCR検査や血清学的検査によって行われます。
治療は全身的な抗菌薬の投与や栄養支持治療、眼や鼻の症状があれば点眼点鼻薬の投与などが行われます。
混合ワクチン接種によって重症化の予防が期待できますが、猫カリシウィルスは抗原性の異なる多くの変位株が存在していてワクチンの効果には注意が必要です。感染猫は環境中にウィルスを排泄する可能性があるため、次亜塩素酸などのよる環境の清浄化を行って蔓延を可能な限り予防します。

お家での環境作り

猫にとって快適な環境作りのためのガイドラインが2013年にAmerican Association of Feline Practitioners(=AAFP米国猫医療学会)とInternational Society of Feline Medicine(=ISFM国際猫医学会)から発表されました。

ガイドラインでは快適な環境作りのために必要な5つの項目をあげています。

1:安全で安心できる場所の用意

周囲が見渡せるような高い位置にある休息場所や隠れられる場所を用意してください。

2:離れた場所に重要な物資や場所を複数用意する

重要な物資や場所とは、フード・水・爪とぎができる場所・遊べる場所・休憩場所・トイレです。これらをその時によって選択できるように複数離れた場所に用意して下さい。

3:遊びや捕食行動の機会の提供

猫は狩猟動物です。猫の心と体の健康を保つには猫が本来持っている狩猟本能が発揮できるような遊びが必要です。知育おもちゃの使用や猫が好きな遊びができるような環境を用意して下さい。

4:家族との良好な社会的関係の構築

猫の意思によって家族との交流を図れるようにしてください。猫がして欲しいことは、猫の持って生まれた性格や幼少期の体験、その後の生活で獲得したものによって様々に変化します。多くの猫は頻繁な接触を好みますが、過度な接触を嫌がる傾向にあります。

5:猫の嗅覚に配慮した環境の提供

猫は嗅覚によって周囲の環境を感じています。猫は自分が好む匂いによって安心感を得ているので匂いが強いものや刺激臭のあるものを嫌がります。猫は顔や体を擦り付けることで匂いによる情報を残しています。このような行動によって猫は快適で安全と思える環境を作っているので、顔や体を擦り付けた場所をきれいに掃除しないで下さい。

日常生活で気を付けたいこと

1.日々の健康チェック

大事なネコちゃんにはいつまでも健康でいて欲しいと思いますよね?
些細な不調のサインを見逃さないためにも普段の状態をきちんと把握することを心がけましょう。

■毎日見てあげて欲しい項目■
食欲 食欲はあるか?お水を飲む量は多すぎないか?など普段と異なることがないかチェックしましょう
行動 体をなめ続けるのはストレスかもしれません。いつもと違う仕草をしていないかをチェックしましょう。
排泄 色、臭い、量、回数、固さ、など健康な時の状態を知っておくことが大切です。
ボディチェック しこりや脱毛はないか?触った時に痛みを訴えないか?など異変がないかをチェックしましょう。
2.肥満防止

まるまるとしているネコちゃんは可愛いですが、肥満が引き起こす病気が多いのも現実です。
肥満は病気のリスクとなることも十分に理解していただき、ダイエットに励んでいただくことをお勧めします。

■肥満の原因を考えよう■
ご飯・おやつの
あげすぎ
ネコちゃんの体は、年齢や状態によって必要な栄養素が異なります。そのため、適正量を超える栄養分は脂肪になって体内に蓄積されやすくなります
運動不足 室内飼いのネコちゃんは特に注意が必要です。
室内に運動用の器具を置いてあげたり、飼主さんと遊んだり、日常的に体を動かせられる環境を用意してあげることが大切です。
その他 遺伝や病気によって太りやすい体質も子もいます。また、不妊・去勢手術の後は基礎代謝が減って太りやすくなることもあります。
体質や状況に合わせた食事をあげることも検討してあげましょう。
3.迷子にならないように

室内で飼っているネコちゃんでも、脱走して迷子になるおそれもあるなど、ネコちゃんが迷子になってしまうことがあります。迷子になってしまった時の対策も行うことをお勧めします。

迷子対策としてできること ・首輪などに迷子札を付けておきましょう。
・マイクロチップをお勧めしています。
迷子になってしまったら 【いなくなった場所を探す】
室内飼いのネコちゃんが迷子になった場合は、知らない場所におびえ、物陰に隠れていることが多いようです。まずは近くの物陰をしっかりと探してあげましょう。
また、探す時はキャリーバッグやネコちゃんの好きな食べ物などを持っていくと良いでしょう。

【関係機関に連絡する】
周辺を探して見つからない場合には、どこかに保護されていることも考えられます。
地域の保健所や動物愛護センター、警察などに問合せしてみましょう。