-
-
WSAVAワクチネーションガイドラインの実践解説


WSAVAワクチネーションガイドラインの実践解説
2025年03月29日
WSAVAワクチネーションガイドラインの実践解説というwebセミナーを視聴しました。
まずはWSAVAてなんだよってなりますよね?
WSAVA=World Small Animal Veterinary Association=世界小動物獣医師会です。
様々なガイドラインを出していますが、混合ワクチンに関するガイドラインを以前から出していて数年に1回更新がされています。
そのWSAVAが出していたワクチンプログラムのガイドラインが2024年に更新されました。
今回のセミナーは改訂された最新のワクチンプログラムのガイドラインについてのセミナーでした。
講師は大村智記念研究所感染症学研究室 栗田吾郎先生でした。
以前のガイドラインと大きく異なるところが2つありました。
1つ目は犬のワクチンプログラムのガイドラインで以前までノンコアワクチンに入っていたレプトスピラワクチンがコアワクチンに入りました。
2つ目は猫のワクチンプログラムのガイドラインで以前までやはりノンコアワクチンに入っていたFeLVワクチンがコアワクチンに入りました。
また今回WSAVAはコアワクチンの定義も変えてきました。
2016年版のガイドラインでは、「コアワクチンとは生活環境や地理的条件に関わらず、すべての犬と猫に接種すべきワクチン」としていましたが、2024年版では「全ての犬と猫に接種すべきワクチンだが条件として生活スタイルや居住地、旅行先などを考慮して決定する」となりました。
何だかモヤモヤして分かりにくくなりましたね。
つまりは2016年版で言っていた「生活環境や地理的条件に関わらず」という部分が、「生活環境や地理的条件によってコアワクチンだったりノンコアワクチンだったりする」ので、そこは自分たちで判断してねということになったのだと思います。
ネコのFeLVワクチンについては完全室内飼育かどうかで接種するかどうかを決めて良いようなので、完全室内飼育が多い都市部では子猫のうちのプログラム(2024年版のガイドラインでは子猫のうちのワクチンプログラムにFeLVワクチンが入っています)が終われば、今までと同様の3種混合ワクチンで良いと思います。
問題はイヌのレプトスピラワクチンです。
WSAVAはレプトスピラワクチンがコアワクチンとなる条件を提示しています。
1)犬レプトスピラ症が常在している国や地域
2)関与する血清群が分かっている
3)関与する血清群を含む適切なワクチンが市販されている
以上の3条件すべてが揃った場合にコアワクチンと考えるとなっています。
1)犬レプトスピラ症が常在している国や地域について
講師の栗田先生は主に国単位で常在しているか考えていいのではないかとお話されていました。
農水省の発表によると犬レプトスピラ症は毎年散発していますので常在していると考えて良いと思います。
2)関与する血清群が分かっているについて
国内では16の血清群が犬レプトスピラ症の発症に関与していることが分かっています。
そのうち関東で確認されている血清群は10です。
3)関与する血清群を含む適切なワクチンが市販されているについて
関東で確認されている10の血清群に対するワクチンは2種(L.CanicolaとL.Icterohaemorrhagiae)とやや微妙な感じです。
また考えておかなければならないのが副作用です。
個人的な感覚ではレプトスピラワクチンは他の混合ワクチンに比較して副作用の発生頻度が多い気がします。
栗田先生は、海外で行われた他のワクチンとの副作用発生頻度のオッズ比を示してレプトスピラワクチンが特に副作用が起きやすいわけではないとお話されていました。
しかし、同時にこの調査は大型犬の多い海外で行われたもので、小型犬が多い国内にそのまま当てはめるのは注意が必要だともお話されていました。
WSAVAはコアワクチンだと言っているが、以上のような微妙なところもあって副作用に対する心配もあるワクチンを当院に通院されているすべての犬さんに強く接種を勧めるかと言われるとそうではないかな?と思いました。
ただWSAVAがコアワクチンにしてしまった以上、話はしないといけないしこれらのことを理解してもらったうえで接種を希望される場合は接種すべきだと思いました。