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CKDをどう見つけ、どう対処する? IRIS2023アップデートに私見を添えて

2023年12月22日

CKDをどう見つけ、どう対処する? IRIS2023アップデートに私見を添えて というwebセミナーを受講しました。
講師は東京大学獣医臨床病理学教室准教授 米澤智洋先生でした。

CKDとはChronic Kidney Diseaseの略称で日本語では慢性腎臓病と言います。
以前は慢性腎不全と言っていた気がしますが、腎不全とは腎機能のほとんどが失われた状態を指すのでもっと初期の腎機能がやや落ちた段階からをCKDと定義しているようです。
米澤先生は今回IRIS(International Renal Interest Society=国際獣医腎臓病研究グループ)が提唱している腎臓病の診断や検査、治療についてガイドラインに書かれていることと書かれていないことについてお話されていました。

CKD(慢性腎臓病)の診断は少しややこしいところがあって、クレアチニンやSDMAがいくつだからCKDだと簡単に決められないところがあります。
IRISのガイドラインによると次の条件の内1つ以上があればCKDステージ1およびステージ2前期と診断されるようです。
その条件とは以下の4つです。
腎前性要因のない参考基準範囲内でのクレアチニンまたはSDMAの上昇
持続的なSDMAの上昇(SDMA>14μg/dL)
画像上の腎臓の異常
持続的な腎性蛋白尿 UPC犬>0.5 猫>0.4

参考基準範囲内でのクレアチニンまたはSDMAの上昇とはガイドラインに貼ってあるグラフを見ると持続的な上昇(次第に上昇してくるという意味)という意味らしいのですが、ガイドラインの細かい所を読むと20-25%以下の数値の変化は誤差範囲内だというようなことも書いてあるので20-25%を超える上昇がある場合ということのようです。
米澤先生ははっきりとガイドラインにそう書いてあるわけではないがガイドラインに貼ってあるクレアチニンとSDMAのグラフの日付からクレアチニンは1年間隔で次第に上昇している場合、SDMAは1か月間隔で次第に上昇している場合にCKDと考えるのではないかとお話されていました。
また持続的な腎性蛋白尿の持続的とはどのくらいかについてもグラフの日付から1か月間隔で3ヵ月位ではないかとお話されていました。

ガイドラインには他にもCKDと考える検査所見が挙げられていて、臨床症状、身体所見に加えて水和状態を考慮したうえでのクレアチニンとSDMA両者の高値に加えて尿比重の低下(犬<1.030 猫<1.035)があればステージ2後期~ステージ4のCKDと診断すると書いてあります。こちらは持続的とは書いてないので1回の検査で診断が可能ということになります。
米澤先生はこちらの診断基準については、AKI(急性腎障害)との鑑別が必要ということと臨床症状、身体所見に加えて水和状態を考慮したうえで検査を行わないとCKDではない症例がCKDになってしまうので注意が必要だとお話されていました。

CKDは高齢の犬や猫に(特に猫)多い病気です。きちんとした診断基準に沿って診断をして、ステージによって推奨される治療を行っていきたいと思います。