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臨床現場で役立つ誤飲・中毒対応:判断基準・催吐治療戦略


臨床現場で役立つ誤飲・中毒対応:判断基準・催吐治療戦略
2026年02月21日
臨床現場で役立つ誤飲・中毒対応:判断基準・催吐治療戦略というタイトルのwebセミナーを視聴しました。
講師は札幌夜間動物病院の川瀬広大先生でした。
川瀬先生は動物救急医療のトップランナーですね。
本セミナーは新しく犬の催吐薬(=吐かせる薬)として発売されたクレボル(薬剤名:ロピニロール)の販促も兼ねたセミナーでした。
川瀬先生は始めにご自身の病院(札幌夜間動物病院)に過去10年位の間に来院された誤飲症例(犬:4174頭、猫:585頭)の内訳についてお話されていました。
セミナーのハンドアウトを転載すれば簡単ですが、転載してはいけないことになっていますので文字でお伝えします。
誤飲物の内訳については中毒物40%、異物60%だったようです。
中毒物の内訳は、チョコレート25%・ネギ類22%・薬17%・タバコ5%・植物や肥料5%・ぶどう3%・キシリトール3%・その他20%だったようです。チョコレートの誤飲症例は2月に増えるとのお話は興味深かったです。
また17%の薬の内訳は、睡眠薬22.6%・イブプロフェン14%・その他のNSAIDs12%・軟膏6%・鎮咳薬2%・その他43%とのことでした。ほとんどが睡眠薬とNSAIDsですね(NSAIDsとはロキソニンやボルタレン、イブプロフェンなどの抗炎症薬の総称です)。
以前にも中毒治療については何度かブログにしていますが、何かを飲んでしまったというような症例はたまに来院されます。
チョコレートもありますし、ヒト用の薬もあります。
まず始めに食べてしまってからの経過時間や症状の発現程度から胃内にまだ中毒物質が残っているかどうかを判断します。
催吐処置の適応かどうかを判断して、催吐のメリットが大きいようでしたら吐かせることになります。
つまり、中毒物質を摂取してから24時間経過していて症状も出ているようだと、もう吸収してしまっているので吐かせても得られる利益が少ないだろうと考えるということです。
これを除染と言います。体内に吸収される前に毒物を取り除く処置ということですね。
除染には先に挙げました催吐以外に、胃洗浄、活性炭投与、皮膚洗浄(中毒物質が皮膚に触れていた場合)などがあります。
もちろんすでに重篤な症状が出ていて治療が必要であれば、救急治療のABC(Airway-Breathing-Circulation)に沿って催吐よりも治療が優先される場合もあります。
催吐処置後あるいは催吐が選択されなかった場合に必要であれば活性炭(毒物の吸着)・解毒薬(無いことがほとんど)・脂肪乳剤(体内に取り込まれてしまった毒物の無力化)などの投与が行われます。命を守るための治療が必要であればここでも並行して行われます。
これらの処置について重要なのは、何をどのくらい食べたのかということです。
チョコレートなどのよくある物質については情報はありますし、製造メーカーに問い合わせると製品に含まれるカフェインとテオブロミンの量を教えてくれることがほとんどです。しかし、ヒトの薬や植物などについては情報がほとんどないこともあります。
当院ではそのような事態に備えて「中毒情報センター」という所の賛助会員になって年会費をお支払いしています。
中毒情報センターとは世の中に流通する薬物毒物についての詳しい情報を教えてくれるありがたい情報機関です。
また中毒情報センターはその都度お支払いをすれば情報を教えてくれるのですが、賛助会員になっていると優先的に情報を教えてくれるので1秒でも早く情報を得るために賛助会員になっています。
今年も年1回の賛助会員契約更新のお知らせが来ましたのでお支払してきました。
ちなみに町の獣医さんたちに対して行ったアンケート(回答数144)によると、中毒情報センターを利用している先生は全体の10%の14人、中毒情報センターの賛助会員になっているのは1人(つまり僕だけ)ということでした。
中毒情報センターを普段から利用している者としては、毒物を摂取した動物が来院した際の中毒治療について中毒情報センターなしでは考えられないような気持ちになりますが、90%の先生方はどうしているのでしょうか。気になります。
話をセミナーに戻します。セミナー内で催吐に何の薬物を用いているのかという過去に日本獣医師会紙で報告された調査報告(←リンク先にとびます)について触れていました。報告によると催吐処置に用いられている薬剤はトラネキサム酸44%、過酸化水素水24%、食塩水5%、アポモルヒネ3%、その他5%、重複使用20%ということでした。
これらの薬剤のうちトラネキサム酸・過酸化水素水・食塩水を用いた催吐については過去のブログでその危険性について触れていますので興味のある方はこちら(←リンク先にとびます)から飛んで行って読んでみて下さい。
どうしても話題がセミナーから離れてしまいますが無理やり戻しまして、セミナーでは最後にトラネキサム酸とアポモルヒネとクレボルの比較をされていました。クレボルは催吐薬を点眼して吐かせるような薬なのですが、当院でもすでに使っています。
使用感は非常に良いという感触です。以前使用していたアポモルヒネも安全によく吐く薬でしたが、クレボルの方がやや吐くかな?という印象です。
中毒診療では時に飼い主様から「中毒物質を食べたが、今は元気だから調子が悪くなったら病院に連れて行く」というようなことを聞く場面があります。これ、非常に危険です。症状が出た時はすでに毒物が体内に吸収されています。毒物が体内に吸収されてからではできることも限られてきますので、毒物を摂取してしまった時は可能な限り早く動物病院に連れて行ってください。
そしてできたら中毒情報センターを使用している動物病院に連れて行ってください(特にヒトの薬物を摂取してしまった場合)。
あるいはいつも通っている動物病院の先生に中毒情報センターを使ってくださいと言ってください。
きっと賛助会員になって下さる(はず?)と思います。









