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肝腎なタンパク制限食の使い方・考え方

2024年03月11日

肝腎なタンパク制限食の使い方・考え方(第20回日本獣医内科学アカデミー 教育講演)というセミナーを受講しました。
講師は日本大学生物資源科学部獣医消化器病研究室の阪本裕美先生でした。
阪本先生は今回の第20回日本獣医内科学アカデミーで他の「膵臓腫瘍(インスリノーマ,ガストリノーマ,膵臓腺癌)を見つけよう!?(超音波、CT検査)」という教育講演もされていました。
膵臓腫瘍を見つけようの方の教育講演内で、蛋白制限食についての教育講演もやるとお話されていたのでこっちもみることにしました。

肝腎なと言っているように本セミナーは肝臓疾患と腎臓疾患についての食事についてのお話でした。
阪本先生はまず肝疾患のある動物の食事について、肝数値が上昇するだけの空胞性肝障害については低脂肪食や低カロリー食、門脈圧亢進のない原発性門脈低形成では総合栄養食、肝機能不全の見られるような門脈体循環シャントや肝硬変のような慢性肝疾患では肝臓病用療法食を勧めていました。
世はインターネット社会です。動物病院で肝臓の数値が高いと言われてインターネットで肝臓病用療法食を個人の判断で購入される方が時におられますが、療法食の購入については必ずかかりつけの先生に相談されることをお勧めします。肝機能不全の動物はタンパク質吸収の際に出てくるアンモニアの分解や吸収の能力が下がっています。よって通常食では分解できなかったアンモニアが血中に流れ出て高アンモニア血症になります。高アンモニア血症によって意識障害(肝性脳症)がでることもあります。肝臓病用療法食はタンパク質の吸収時に出てくるアンモニアを減らすためにわざとタンパク質の量を減らしているんですね。肝臓病用療法食とはつまり肝性脳症の予防食と言って良いと思います。肝臓の数値が高いだけで他に問題のない動物が蛋白を減らした食事を普段から摂っていたら低蛋白による弊害がでることもあると思います。
阪本先生は肝臓病用療法食について、他にも銅制限(銅蓄積性肝炎対策)、ナトリウム制限(門脈圧亢進による腹水貯留対策)がされているとお話されていました。どちらにしてもかなり特殊な食事と言えると思います。

先生は他にも慢性肝疾患の初期から中期では障害をうけた肝細胞修復のためにタンパク質制限は行わないが、慢性肝疾患の末期では肝臓でのアンモニア代謝能力低下による筋肉におけるアンモニア代謝が増加して、筋肉でのアミノ酸代謝のためのBCAA(分岐鎖アミノ酸)の消費が増えて肝臓で合成されるAAA(芳香族アミノ酸)が減ることでアミノ酸のインバランスが起きるとお話されていました。
インバランス是正のためにリーバクトという必須アミノ酸製剤を使っているとお話されていましたが、1kgあたりどのくらい使っているのかはお話されていませんでした。残念です。

肝臓だけでもまだまだ書ききれないほど有用なお話がありましたが、もう疲れたのでブログでの紹介はここまでにします。