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時 間 午前9~12時、午後4~7時
休診日 火曜日・祝日

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知らないとまずい?中毒に対する基礎知識

2023年10月04日

知らないとまずい?中毒に対する基礎知識というwebセミナーを受講しました。
講師は大阪公立大学付属獣医臨床センター 夜間救急科の森田篤先生でした。

森田先生は前半で誤食症例に対するアプローチについて後半では遭遇頻度が高い中毒についてお話されていました。
誤食症例に対するアプローチでは2021年に日本獣医師会が行ったどんな薬剤を用いて誤食症例を吐かせているかというアンケート結果をもとに催吐方法についてお話をされていましたが、44%がトラネキサム酸、24%が過酸化水素、5%が食塩、3%がアポモルヒネを使っていたそうです。
多くの病院がトラネキサム酸を使っているようですね。当院でも数年前まではトラネキサム酸を使っていました。トラネキサム酸は止血や抗炎症を目的に広く用いられている薬剤なので病院にあるからという理由があるかもしれませんが、通常使用量と催吐に用いられている量には大きな差があって稀に痙攣が止まらなくなったり血栓傾向の犬では血栓が体内にできてしまうことによって動物が最悪亡くなってしまうことがあるという報告がでています。
以前はトラネキサム酸を使う以外に吐かせる方法がなかったので飼い主様方によくお話ををして大量投与をしていましたが、いつもハラハラしながら使っていました。催吐率もそこまで高くない印象があって、通常薬容量の2-10倍をそもそも投与しているのですが、それを3回(つまり6-30倍)投与してもまだ吐かないということもありました。現在は催吐薬はアポモルヒネに切り替えているのでハラハラすることもありませんし、催吐率も高いので安心して?吐いてもらっています。
ちなみに24%の病院が使用している過酸化水素とはオキシドールのことなんですが、胃粘膜に炎症や潰瘍を起こさせて吐かせるという催吐薬なので当院では採用していませんでしたしこれからも採用することはありません。
5%の病院が使っている食塩は動物を食塩中毒にして吐かせる薬剤なのでこれも当院では使用していません。

森田先生はトラネキサム酸についても薬剤の副作用を用いて吐かせると言うにはそもそもの使用目的が異なることや使用薬容量が多すぎることからもトラネキサム酸の中毒作用を用いて吐かせると飼い主様方に説明した方がいいのではないかとお話されていました。

ここでは副作用という言葉の定義が問題になりますが
独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第4条第6項には副作用とは許可医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその許可医薬品により人に発現する有害な反応という表記があります。
WHO(世界保健機構)では副作用とは疾病の予防、診断、治療のため又は身体の機能を正常化するために人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意図しない反応とされています。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構法には「許可医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合」とありますし、WHOでは「通常用いられる量で」と表記されています。
トラネキサム酸の効果効能には「止血効果」と「抗炎症効果」は表記されていますが、催吐効果が表記されていないのでトラネキサム酸を催吐目的に使うことは適正な使用目的ではないことや通常使用される量の数倍以上の量を投与しているので「通常用いられる量」でもないことを考えれば、副作用とは言えないのではないか?ということですねよ。
言葉の定義の問題だと言ってしまえばそうかもしれませんが、飼い主様に説明する際になんと説明すべきか難しい所だとは思います。

 

セミナー後半では遭遇頻度が高い中毒としてキシリトール中毒・チョコレート中毒・アセトアミノフェン中毒・(携帯カイロ誤食による)鉄中毒・ブドウ中毒・タマネギ中毒・ご家族が内服している薬の誤食などについてお話されていました。

チョコレート中毒については誤食したチョコレートの種類や量、犬の体重を入力してどの程度危険があるかを計算してくれるチョコレート中毒計算機がネット上にありますので紹介しておきます。

https://veterinaryclinic.com/chocolate/calc.html

 

 

 

 

チョコレートもタマネギもブドウも治療は基本的には同じで、危険があればまずは催吐して必要があれば胃洗浄になります。すでに消化管からほとんどの毒物が吸収されてしまっているようであれば点滴によって毒物を希釈して尿に排出させたりになります。それぞれの動物で毒物に対する感受性は異なるので当院では基本的に治療はやややりすぎくらいをちょうどいい所と考えています。

先日夜間救急病院から連絡がきて、当院に普段来てくれている猫がシュウマイを食べて昨晩来院したのでトラネキサム酸で催吐したが吐かなかった。体調に異変があるようなら普段かかっている病院に連絡をするように話して帰しましたという内容でした。
自分としては体調に異変があってからの来院だと危険だと考えたのですぐに飼い主様に連絡をとって症状が出てからでは手遅れになることがあるので出来るだけ早く猫ちゃんを連れて来てくださいとお話しました。
連れて来てもらって血液検査をして貧血がないことを確認。そこから数日点滴をして、明日まで症状が出なかったら治療終了でいいですかね~?とお話していたら次の日に吐いて下痢をしました。むむ?と思って血液検査をしてみると数日前よりも明らかに貧血になっていました。

タマネギ中毒です。

数日間の点滴がどの程度効果があったかはわかりませんが毒物の排出は少しは出来ていたはずです。
数日の点滴がなかったらもっと重い症状が出ていたかと思うと点滴をしておいてよかったなと思いました。
ちなみにタマネギ中毒は犬よりも猫の方が感受性が高いと言われているので注意が必要です。

ちなみにトラネキサム酸による猫の催吐率は方法にもよりますが数%~20%程度と決して高くありません。
当院で採用しているデクスメデトミジンだと60%程度の催吐率がありますが、それでも不満が残る催吐率ですね。猫に安全に使える催吐率の高い薬剤が出てくるといいなと思います。