-
猫の尿管閉塞に対する治療戦略 腎瘻入ればなんとかなる!
猫の尿管閉塞に対する治療戦略 腎瘻入ればなんとかなる!
2024年06月29日
VETS TECH主催の猫の尿管閉塞に対する治療戦略 腎瘻入れば何とかなるというwebセミナーを受講しました。
講師は京都動物医療センターの平野隆爾先生でした。
尿は腎臓で作られて尿管を通って膀胱に貯められます。貯まった尿は膀胱から尿道を通って体外に排出されるようになっています。
しかし何かしらの原因(ほとんどの場合小さな結石)によって尿管が閉塞してしまうとその時点で腎臓は健康でも尿が体外に排出できなくなって動物の状態が悪化してしまいます。
腎瘻カテーテルとは腎臓の腎盂という尿の通り道に入れるカテーテルで、この腎瘻カテーテルを超音波ガイド下で経皮的に入れて腎臓に留置することで当面の排尿ができるようにして動物の状態をよくすることが可能です。
このようなテクニックがあることは知っていましたが、その後の尿管結石の手術には手術用顕微鏡が必要なようだしちょっと当院での導入は難しいと判断していました。
平野先生は尿管結石の手術に手術用顕微鏡でなく3-3.5倍の拡大鏡を使用しているとお話されていました。
当院で使用している拡大鏡は2.5倍ですが、パーツの変更によって3.5倍にもできるので急にやる気になってきました。
しかも尿管閉塞は時に致死的な病気です。
当院で尿管結石の手術ができるように準備をしておくことは動物と飼い主様の利益にかなうことだと考えました。
ちなみに腎臓は2つあるので尿管が1つが詰まっても大抵症状は出ません。
症状が突然出てしまった動物は、すでに片側の腎臓が尿管閉塞などによって機能を失っていて1つしか残っていない腎臓で生活していたところに尿管閉塞によって症状が出てしまったか、あるいは同時に左右の尿管が閉塞してしまったかのどちらかです。
その状態で点滴などの内科治療しか行わなければ高い確率で急性腎障害によって残念ながら動物は亡くなってしまいます。
セミナーでは実験的に犬の尿管を縛って縛ってから何日で腎機能がどのくらい残っていたか調べた報告についても触れていて、1週間で腎機能は35%減少・2週間で54%減少・40日以上で腎機能の回復は望めないという結果でした。
動物の状態が悪くなっていても腎臓がまだ生きてさえいれば経皮的な腎瘻カテーテルによって動物の状態を安定化させてその後の全身麻酔下での尿管結石の手術に繋げることが可能です。
平野先生はセミナーで自らの失敗談や尿管結石手術後も腎瘻カテーテルを残しておいて腎臓から膀胱までの疎通性の確認に使う話などをされていてとても興味深いセミナーでした。