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犬の尿路上皮癌に対する内科療法 ~最新の分子標的薬を中心に~ 第107回日本獣医麻酔外科学会
犬の尿路上皮癌に対する内科療法 ~最新の分子標的薬を中心に~ 第107回日本獣医麻酔外科学会
2023年12月27日
第107回日本獣医麻酔外科学会 軟部組織外科部門の配信で犬の尿路上皮癌に対する内科療法 ~最新の分子標的薬を中心に~ を視聴しました。
演者は東京大学獣医臨床病理学教室の前田真吾先生でした。
外科の学会なのに内科療法?と疑問を感じるかもしれませんが、1つ前の演題で小動物外科専門医の藤田淳先生が外科について詳しくお話されていました。
藤田先生のお話は、膀胱(♂の場合+前立腺)尿道全切除術や尿路再建(尿管皮膚瘻・尿管-包皮吻合・尿管-膣吻合)などが中心でおおよそ自分でやってみる気にはなれませんでした。
尿路上皮癌の好発部位は膀胱三角部や膀胱-尿道移行部でそこを切除する=膀胱を全切除する=腎臓で作られた尿を膀胱に貯めることができなくなる=排尿経路を別に作らないと排尿が出来なくなるということになるとてもやっかいな手術です。
膀胱に尿貯留できなくなるということは、別の経路を作ったとしても尿は常に流れ出ていますので体にペットシーツをあてるなどして排尿の管理が生涯必要となります。
しかも尿路上皮癌は比較的悪性度が高く、外科手術をしても多くの場合で遠隔転移を起こします。
そんな手術も管理も大変なのに遠隔転移まで起こすって外科手術やる気にならないな!薬でなんとかならないのか?ってなりますよね。
そんなお話を前田先生がされていました。
前田先生は3つの分子標的薬を犬の尿路上皮癌に使ってみたという報告についてご自身の発表も含めてお話されていました。
3つの分子標的薬とは、BRAF阻害剤ベムラフェニブ・HER2阻害剤ラパチニブ・CCR4阻害剤モガムリズマブでした。
前田先生のグループが行ったラパチニブとピロキシカムを用いて犬の尿路上皮癌の症例の治療をした報告ではCR3%、PR52%、SD34%、PD11%でPFI(無増悪期間)193日、MST(生存期間中央値)435日と使用した際の期待がもてる結果でした。
当院にも尿路上皮癌のチワワのわんちゃんがいますので、これは!使えるのでは?と思いましたが、チワワにに使うには大きすぎて4分割(あるいは粉砕して粉)にしないと使えないようでした。一応次回飼い主様が来院された際にお話はしてみようと思いました。