-
-
救急から考える犬の急性膵炎~膵炎に関するエビデンスが少ない中でどう向き合うか~


救急から考える犬の急性膵炎~膵炎に関するエビデンスが少ない中でどう向き合うか~
2025年12月21日
救急から考える犬の急性膵炎~膵炎に関するエビデンスが少ない中でどう向き合うか~というwebセミナーを受講しました。
講師はTRVA動物医療センターの塗木貴臣先生とノースカロライナ州立大学の上田悠先生でした(2人とも救急の超有名な先生です)。
セミナーは、前半で上田先生が急性膵炎についてお話をされてその後上田先生と塗木先生が対談を行うという構成でした。
上田先生は初めに膵炎の診断は難しいとお話されていました。
確かにそうだと思います。
普段の動物診療の中で検査結果の判断に悩むケースはよくあります。
どちらかというと判断に悩むことの方が多く、ほとんどのケースでこの検査がこうだったからこの動物の病気はコレ!という感じにはなりません。
急性膵炎もまさにそんな感じで、血液検査も画像検査もこれといった決め手に欠ける検査です。
またこれといった特定の症状というものもありません。(強い腹部疼痛があればかなり怪しいとは思います)
セミナー内で血液検査と超音波検査の感度と特異度について上田先生がお話されていました。
血液検査の膵特異的リパーゼ測定の感度は70-91%特異度は74-88%、snap cPLの感度は74-100%特異度は59-78%とのことでした。
また急性膵炎に対する超音波検査での感度は42-89%特異度は43-92%とのことでした。
当院でも急性膵炎を診断するときは、飼い主様から伺う動物の状態に関するお話に血液検査結果と画像検査結果に動物の状態を加えて総合的に判断しています。
検査値と症状が一致しないこともよくあって、本当に膵炎??と悩むこともあります。
上田先生も検査値と一致しない、つまり症状が強く出ているが膵特異的リパーゼの数値が上がらないいくつかのケースにおいてお話されていました。
飼い主様にしてみれば、他にちゃんとした検査はないのか?そのような当てにならない検査しかないのか?
そもそもそのような当てにならない検査をなぜするのか?と思われるかもしれません。
何故かというと。。。。他にないからです。
これらの検査に頼るしか他に方法がないんです。
それぞれの検査の感度や特異度がそれほど高くなくても、いくつもの検査や飼い主様のお話や動物の状態を組み合わせて総合的に判断するしかないんです。
ここで勘の良いかたは気が付くと思いますが、このようなやり方だと結果的に間違った判断が生まれることがあります。
セミナー内で塗木先生(塗木先生は夜間救急の先生です)が、膵特異的リパーゼが高いので膵炎だと言われて治療をしているという動物に、消化管内異物が見つかることがあるとお話されていました。
つまり、判断が間違っていたということですね。
消化管内異物は吐いて食欲が廃絶しますし、膵特異的リパーゼが上がることもあります。症状も検査値も膵炎によく似ています。
消化管内異物に特徴的な消化管の拡張や液体貯留が超音波検査で見つかれば、異物による閉塞かも?と思うかもしれませんが、不完全閉塞であれば拡張も液体貯留もないかもしれません。
そうなるともう消化管内を超音波検査でくまなく調べて異物がないかどうか調べるしか方法がない気がします。
セミナー冒頭に上田先生がお話されていたように、膵炎の診断は難しいんです。
僕が同じ立場に立たされたとしたら、異物があるのかないのか徹底的に消化管内を調べると思いますが、見つからなかった場合は「丁寧にしっかり検査はしましたが異物は見つかりませんでした。でももし見落としていたらごめんなさい。」と飼い主様に正直にお話すると思います。
「異物ではありません。よって膵炎です。」とハッキリ言えないと思います。
膵炎なのか異物なのか判断できない頼りにならない獣医だと思われるかもしれませんが、それが動物と飼い主様に対する誠実な態度だと思うからです。
白い巨塔で財前先生も言ってました。「医療に絶対はない!」と
いやまあこれは良いですかね。
話を戻します。
このように動物病院での診療には白黒はっきりできない判断に悩むケースは沢山あります。
飼い主様方には検査とはそのようなものだと理解してもらって、頼りないと思われるかもしれない獣医にもご理解とご協力を頂きまして動物の診療をスムーズに前に勧めて行けたらいいなあと思っています。









