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局所麻酔法~ブラインド法でできるものを中心に~

2025年11月29日

局所麻酔法~ブラインド法でできるものを中心に~というwebセミナーを受講しました。

本セミナーは日本獣医麻酔外科学会麻酔疼痛管理委員会講習会の麻薬性オピオイドに頼らない犬猫の疼痛管理法という麻酔疼痛管理法に関わる講習会の一部でありまして、他には非麻薬性オピオイドやNSAIDsについてよく知りましょうというような内容の講習会もありました。
また本セミナーは2025年10月に東京大学弥生講堂一条ホールで行われた講習会の録画配信でした。
麻酔外科学会はコロナ自粛期間が明けてからもこのような配信をよくやってくれるのでとてもありがたいです。

難しい言葉がまた出ましたね。
オピオイドって何?ってなりますよね。
僕も普段から麻薬性や非麻薬性オピオイドという単語はよく聞きますが、はっきりと分かっていなかったので最近流行りのchatGPTさんに聞いてみました。

「オピオイドとは何ですか?」

chatGPTの解答
「オピオイド(opioids)とは、体内のオピオイド受容体に結合して鎮痛作用などを示す物質の総称です。医療では強力な鎮痛薬として広く使われています。」

ん~~なんだかよくわかんないですね。鎮痛効果が強い鎮痛剤ではありそうだけどな

続いてGoogle AIにも聞いてみました。

Google AIによると
オピオイドとは、アヘン(オピウム)由来のアルカロイド(例:モルヒネ、コデイン)およびそれらに似た化学構造を持つ合成物質の総称で、鎮痛作用を持つ薬物を指します。天然由来のオピオイドにはモルヒネやコデインがあり、これらを半合成したもの(例:オキシコドン)や、すべて合成して作られたもの(例:フェンタニル、メサドン)も含まれます。

つまりアヘン由来の化合物やそれに似た化合物で強い鎮痛作用のある薬ってことですかね。

そしてオピオイドというグループの中に法律で麻薬に指定された麻薬性オピオイドと麻薬に指定されてない非麻薬性オピオイドがあるってことかな

本セミナーのタイトルにも入っている麻薬性オピオイドに頼らない犬猫の疼痛管理法という文言についてですが、最近麻薬性オピオイドであるフェンタニルという薬の入手が難しい場面があります。
フェンタニルは疼痛管理薬としてはとても優秀な薬で、モルヒネの100倍鎮痛効果があってしかも眠くならないという薬です。
当院では麻酔リスクを下げたい場面では100%フェンタニルのお世話になっていますし、様々な病気で痛みのコントロールをしたい場面でも使っています。注射薬も貼り薬もあってとても便利です。
ただし、麻薬性オピオイドですから麻薬取扱の免許や手続きなど法律に則した使用をしなければいけません。

そのとても優秀な鎮痛薬であるフェンタニルのメーカー出荷が何かしらの要因で少なくなってしまって、人医療で使う数を確保すると動物まで回せないというような状況になっているようです。
そこでフェンタニルに頼らなくてもいい疼痛管理法について学びましょうという講習会が企画されたということですね。

講習会の中で非麻薬性オピオイドやNSAIDsとしていくつかの薬物が紹介されていましたが、どれもやはりフェンタニルと比べると頼りない感じがしました。
しかし、そのなかでは局所麻酔薬は確かに使えるなという手応えはありました。
麻酔管理の中には疼痛管理というものがありまして、いかに疼痛管理をきちんとするかで麻酔リスクをどの程度下げられるかがある程度決まってくると考えています。麻酔と疼痛管理の考え方については本HPに載せてある(←ここから飛べます)のでご興味のある方は読んでみてください。

局所麻酔薬~ブラインド法でできるものを中心に~というwebセミナーを受講しましたというタイトルのブログですが、ここでやっと本題に戻ってきました。局所麻酔薬の使い方について大阪公立大学の田中翔先生がお話されていました。
局所麻酔ってあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、歯医者さんで歯を削る際に始めにうつ注射です。
あれをうつと痛みがわからなくなるだけでなく注射薬の効果範囲の感覚がなくなりますよね。
つまり「そのような注射薬(局所麻酔薬)と使用方法について学びましょう」というセミナーですね。

本HPの麻酔疼痛緩和科に飛んでもらって全身麻酔とバランス麻酔や局所麻酔の所を読んでもらった方はもうわかっていると思いますが、通常使われる吸入麻酔薬に鎮痛効果はほぼありません。この話をするとビックリされる方が多いのですが、鎮痛効果はほぼありません。
じゃあなぜ痛みが強い手術をしても覚醒しないのかというと、薬で眠っているからです。痛みが強くなればなるほど眠りを深くしないと起きてしまいますから、強い痛みが予想される時は覚醒しないように吸入麻酔薬を多めに使います。
ここで問題になるのが吸入麻酔薬のよくない側面である血管拡張による血圧低下です。
元々状態が悪くて麻酔リスクが高い症例には吸入麻酔薬は出来るだけ少なくして麻酔をかけたいのですが、覚醒してしまうからと吸入麻酔薬を多めに使ったら血圧が下がります。
血圧が低下は命にかかわりますから吸入麻酔薬を減らしたら動物は痛みで起きてしまいます。
手術の途中で痛くなって起きてしまったら、動物はかわいそうだし目的である手術は進みません。

よって鎮痛はとてもとても大事なのです。特に状態の悪い動物の麻酔管理において重要度が上がります。

局所麻酔薬はそんな場面で痛みをコントロールして吸入麻酔薬を減量させ麻酔管理を安全に行える素晴らしい薬だと思いますが、やや気難しい部分もあります。

まず、毒性があります。神経毒性もあるし心毒性もあります。
毒性あるの?危険な薬では?と思うかもしれませんが、ルールを守って使っていれば大丈夫です。
以下にその使い方の説明をします。

局所麻酔薬は決して血管内に入れてはならない薬です。多くの場面で注射針を使いたい部分に刺して局所麻酔薬を入れるのですが、必ず注射器の内筒を引いて陰圧をかけ血管内に血液が入っていないことを確認して使う薬です。僕も毎回陰圧をかけて血管内に誤侵入していないことを確認してから局所麻酔薬を入れていますが、過去に1回だけ陰圧をかけた時に血液が注射器の中に入ってきたことがありました。偶然注射針が血管内に入っていたんですね。そのままうっかり陰圧にしないまま注射していたらと思うと。。。。怖いです。
何事も基本が大事ですね。

田中先生は、局所麻酔を行っている施設は局所麻酔薬を間違って血管内に入れてしまった際のレスキュー薬として必ず脂肪乳剤を用意しておいてくださいとお話されていました。(まだ幸い使ったことはありませんが、当院でも用意してあります。また緊急時にあたふたしないように分かりやすい所にその使用方法も明示してあります)
まあ神経を麻痺させるような薬ですからね。そのまま血液にのって心臓まで行ったら心臓が麻痺して動かなくなってもおかしくないですよね。
これからも十分気を付けて使いたいと思います。

そのような毒性はあっても使い方さえきちんと守っていればその鎮痛効果の強さが生きるとても頼りになる薬です。

2番目に気難しいところはその投与方法です。
局所麻酔薬を使う場面は色々とあると思いますが、太い神経の周囲に撒いてその場所より末梢の知覚を麻痺させる場合や硬膜外という場所に局所麻酔薬を注入したりする場合は局所麻酔薬をその場所に置いてきてしかも周囲組織の損傷を与えないようにするというトレーニングが必要です。
気軽には使えない薬ですね。
今回のセミナーで田中先生は今まで自分が行っていなかった場所の神経ブロック方法を紹介されていたので今後使ってみたいと思いました。

そのような気難しい側面もある局所麻酔薬ですが、麻酔リスクを下げたい場面ではとても有用な薬です。
今後フェンタニルが全く入手できなくなるというような状況はあるかもしれないので、その時のために局所麻酔薬使用を今以上に考えていきたいと思いました。