TEL 042-333-0009

時 間 午前9~12時、午後4~7時
休診日 火曜日・祝日

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咳するB2 Vets ManaViva 循環器部屋

2024年04月13日

Vets ManaViva 循環器部屋の3月のお題だった「咳するB2」を視聴しました。
Vets ManaViva 循環器部屋というのはインターネット上のサロンのような場所で、小動物診療をしている先生方の中で循環器診療に興味のある先生や知識やスキルを上げたいと考えている先生方が集まっています。
色々とあって今日やっと3月のテーマだった咳するB2を視聴できたのですが、テーマのB2とは僧帽弁閉鎖不全症のACVIM分類でのステージB2のことで、つまり「咳をする僧帽弁閉鎖不全症ステージB2の犬について」ということになりますね。
ちなみに犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージ分類(ACVIM)ではステージはA~Dに分けられていて、ざっくりとB以降は心雑音がある犬、C以降は過去か現在心不全(=肺水腫)になっている犬、Dは通常の治療では間に合わないくらい症状の進んでいる犬に分けられています。ステージBはさらに心拡大や変形が無いB1と心拡大や変形があるB2に分けられています。

毎回テーマに沿った問題が出題されて、答えが出てから本編が公開されるので僕ももう1か月ほど前になりますが答えは提出していました。
今回の講師は北海道大学の中村健介先生でした。
先生は始めに僧帽弁閉鎖不全症の雑音が聴取できるのは等容性収縮期・駆出期・等容性弛緩期・充満期・心房収縮期の内どこからどこかについて前回テーマになっていた肺動脈狭窄症と比べてお話されていました。
次にB2と判断するための心臓超音波検査について検査の正確性を挙げるための検査方法などについてお話されていました。LA/Aoについては先生も仰っておられましたが、正しい検査を行うのはなかなか難しいと思いました。ちなみに先生はLA/AoのAoはAortaではなく正しくはAortic Rootであって大動脈起始部ですよ!とお話されていました。LA/Ao検査では大動脈弁を入れて検査しますので誰も大動脈のどこでもいいとは思っていないとは思いますが、なんとなくずっとAortaのAoだとばかり思っていたので少しだけ利口になった気がしました。

webセミナー終盤では、咳=心不全ではないという話をされていました。
今回中村先生からいくつかの問題が動画の前に出されていましたが、その内のひとつに「僧帽弁閉鎖不全症の犬において咳との関連が最も示唆されていないのは次の内どれでしょう? 左室拡大・左房拡大・肺高血圧症・肺水腫・気管支軟化症」という問題がありました。
つまり左室拡大・左房拡大・肺高血圧症・肺水腫・気管支軟化症の中から咳と関連する病態を除外していけば残ったものが答えになります。
気管支軟化症はよく咳の原因になりますから除外、左房拡大や左室拡大も心拡大による咳を起こすので除外、残ったのは肺高血圧と肺水腫ですが、ここで肺水腫を除外して肺高血圧を選んだ先生が最も多かったようでした。僕も肺高血圧を選んだ気がします。
しかし先に書いたように咳=心不全(心不全=肺水腫)ではないので、答え(僧帽弁閉鎖不全症の犬において咳との関連が最も示唆されていないのは)は肺水腫ということになります。

次に中村先生は僧帽弁閉鎖不全症の犬における咳と予後(予後=これから予想される展望とか展開、ざっくりと言うとこれからどれだけ生きていられるかということ)には関連がないという報告を紹介されていました。
しかし、咳がひどくなると生活の質は明らかに落ちますので予後と関連しないから治療しなくて良いということにはなりません。
先生はACVIMのコンセンサスステートメントに載っている僧帽弁閉鎖不全症StageB2の犬に勧められる治療法について触れていました。一番の推奨はピモベンダンですが、咳が出るようならACE阻害薬や鎮咳薬も推奨されているようです。

先生は最後にある症例の胸部レントゲンを提示して、レントゲンではそこまで心拡大がないし肺水腫でも無さそうなのでStageB1だと判断した症例がCT撮影で肺水腫が判明してStageCと考え直したというお話をされていました。
ヒトのデータですが、肺水腫を調べる検査としてのレントゲンの感度はおよそ70%と報告されているそうです。70%は考えていたよりも低い数字でびっくりしました。いつでも誰でもがCT撮影ができるわけではありませんから肺水腫を疑った時はレントゲンだけでなく超音波検査なども検査に含めて慎重に診断することが必要だと思いました。