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うまく細胞診ができるようになる あまり細胞診を見ない先生にこそ聞いてほしい話

2025年10月29日

うまく細胞診ができるようになる あまり細胞診を見ない先生にこそ聞いてほしい話というwebセミナーを受講しました。
講師は米国獣医臨床病理学専門医の藤田直先生でした。

普段の動物病院での仕事の中で細胞診を飼い主様にご提案させて頂くことはよくあります。
細胞診にはガラスの板を主に皮膚表面などの病変部位に押しあてたり綿棒などに付着した細胞をガラスの板に押し付けてガラスに付着した細胞をみるような針を使わない方法と、主に腫瘤(できもの)に針を刺して針の中に落ちてきた細胞をガラスの板に噴き出して細胞をみる方法があります。
今回の藤田先生のお話は針で刺す方のお話でした。

針で腫瘤を刺して細胞診をする時は腫瘤についての診察の中で行うことが多いのですが、毎回飼い主様にお話することがあります。
ほとんどの飼い主様が腫瘤の悪性度を心配されて来院されます。すぐに切除した方がいいのかそれとも切除の必要のないものなのかを見て欲しいというご依頼が多いと思います。
しかし細胞診で診断がでることは稀です。

つまり「ほとんどの場合細胞診で診断はできません」と飼い主様にお伝えします。

「ええ~~!」ってなりますよね。
針を刺してまでして見てるのに診断できないの?というお気持ちもわかります。しかし細胞診とはそういうものです。
じゃあどうすれば診断できるかということになるのですが、一部の腫瘍などを除いてほとんどの場合最終的には組織検査で診断することになります。
つまり切除して診断するということです。

じゃあ細胞診って何?必要ないのでは?と思いがちですが、細胞診は必要だと思います。
例えば、皮膚の下にできものがあって細胞診をとばして切除生検をしたらできものの中から真菌(カビ)が多量に出てきたらどうでしょうか。切除の前に内科治療をすればよかったのでは?と思いませんか
あるいは切除した組織を検査したら思ったより悪性度が高くて取り切れていなかったらどうしましょうか?(悪性度の高い腫瘍の中には見た目以上に腫瘍細胞がまわりに広がっていることがあります)
病院としては再手術をお勧めしますが、針生検によって悪性度が高そうだという情報がすでにあったら1回目の切除生検で取り切れるように広く深く切除するように飼い主様にご提案すると思います。その方が動物と飼い主様にとって利益が大きいと思うからです。
つまり細胞診とは診断を出すための検査ではなく、次に何をすべきなのか(例:切除なのか内科治療なのか経過観察なのか)を示してくれる検査ということですね。

藤田先生は細胞診と組織診を比較して、どちらか一方があればいいというわけではなく両方必要だとお話されていました。
また、細胞診をするのであれば動物を預かって検査するようにとお話されていました。
これは飼い主様のお気持ちを考えるとなかなか難しいと思いますが、預かって検査をするには理由があります。
理由はひとえに細胞診検査が不確実な検査だからです。

当院で針生検をする際は、大抵スライド(検査に使うガラスの板をこう言います)を3-5枚作ります。
針生検をする際は1回で何度も腫瘤をチクチク刺して細胞をとりますので、細胞診をしますということになったら何度もチクチクする検査を3-5回繰り返すということになります。
なぜそんなに何度もするのかというと、細胞診が不安定な検査だからです。
1回の針生検で腫瘤をチクチクして得られた細胞をガラスの板に吹いてスライドを作成します。
それを5回繰り返して5枚のスライドを作成するのですが、スライドを5枚作成して検査に出せるクオリティに達しているスライドが1枚しかないということもたまにあります。
検査に出せるクオリティかどうかは染色してみないとわからないのですが、染色には30分程度時間がかかります。
もし検査にだせるクオリティに達しているスライドがなかったら、どうしますか?
やり直さなくてはいけないですよね。
作成するスライドは動物の負担を考えながら可能な限り多い方が良いと思いませんか?

動物を預からないで普段の診療の中で検査をして、動物を帰してしまったらもう検査はできませんので藤田先生は動物を預かって確実にきちんとしたクオリティのスライドを作成してくださいというお話をされていました。
臨床病理に携わっている先生らしいお話だと思いました。
先生は「Garbage in, Garbage out」という言葉を紹介していました。
ゴミを入れたらゴミが出てくるという意味なのですが、つまりクオリティの低い細胞診検査手技ではきちんとした細胞診はできませんよということらしいです。
気を付けたいと思います。

確実な検査をするのであれば動物を預かって検査をするのも必要だと思いました。
飼い主様に事情を説明して選んでもらうようにすればいいかもしれませんね。