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このエコー所見どう読み解く?消化器疾患
このエコー所見どう読み解く?消化器疾患
2023年08月16日
このエコー所見どう読み解く?消化器疾患というwebセミナーを受講しました。
講師の先生は小動物消化器センターの中島亘先生とアジア獣医内科学専門医の金本英之先生でした。
セミナーは講師の先生が実際に診療をした症例を提示して鑑別診断や次に行うべき検査などを参加している先生方から投票してもらうというインタラクティブなセミナーでした。
1症例目は嘔吐下痢が治らない若い柴犬で超音波検査で筋層の肥厚が見られた症例でしたが、答えは急性腸炎で比較的一般的な治療で治ったようでした。紹介元病院では治らなかったのに特殊な治療なしでなぜ治ったのかと質問が出ていました。
2症例目は12歳のシンガプーラで紹介元病院での治療で嘔吐は治っていたが、胃壁に低エコー性の塊があるとのお話で紹介されたようでした。この症例は胃壁に低エコー性の塊があって十二指腸には潰瘍があったのですが、胃壁の塊は大細胞性リンパ腫、十二指腸の潰瘍については小細胞性リンパ腫が答えでした。猫の胃のリンパ腫は全周性に胃壁が厚くなることが多いのですが、塊を作ることもあるんだなと思いました。中島先生は、もしかしたら初めは塊としてあってそれが次第に拡がってきて全周性に病変を作るのではないかとお話されていました。
3症例目は12歳のスコティッシュフォールドで食べても食べても下痢が治らずに体はやせたままという症例でした。胆石や膵管の拡張も超音波検査で確認されたようでした。膵外分泌機能不全症では?と思ってみていたら答えはやはり膵外分泌機能不全症でした。猫の膵外分泌機能不全症では下痢をしないこともあるので多食で甲状腺機能亢進症が除外あるいはコントロールされている症例がやせていたら下痢がなくとも膵外分泌機能不全症を疑って検査をするべきとお話されていました。膵管の拡張については高齢の猫には比較的よく見られる所見ですが、膵管の径が2-2.5mmで症状がなければそれ以上の検査は推奨しないとお話されていました。
最後の4症例目は3歳のミニチュアシュナウザーで肝酵素の上昇をともなう慢性的な嘔吐下痢活動性の低下のある症例でした。ミニチュアシュナウザーだし肝炎かな?門脈低形成かな?門脈径は通常通りのようだったので門脈体循環シャントではなさそうだなと思って聞いていましたら、答えはDuctal Plate Malformationでした。Ductal Plateとは発生の段階で門脈の周りにあって胆管に分化していく組織のようで、それが何かしらの理由によって正常な発達をしないまま生まれてきてしまうとDuctal Plate Malformationとなるようです。二人の先生はDuctal Plate Malformationは時々遭遇するので、門脈体循環シャント・門脈低形成に次ぐ3番目の先天性肝疾患として注意しておいた方がいいとお話されていました。先天性肝疾患は門脈体循環シャントと門脈低形成しか意識していなかったのでこれからはDuctal Plate Malformationも3番目の先天性肝疾患として意識しておきたいと思いました。