TEL 042-333-0009

時 間 午前9~12時、午後4~7時
休診日 火曜日・祝日

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泌尿器科

当院の泌尿器科について

泌尿器科は主に腎臓や膀胱の病気に対応する科目です。
腎臓病というのは、腎臓に起こる様々な病気(腎アミロイドーシス、間質性腎炎、糸球体腎炎、腎臓腫瘍など)の総称であって、腎臓病という病気があるわけではありません。
それぞれの病気は異なる病態をとるため、それぞれの病気に対する検査や治療は異なったものになります。
膀胱の病気には細菌性膀胱炎、猫の下部尿路疾患、猫の特発性膀胱炎、膀胱結石などがあります。

腎臓の病気では、水を飲む量が多い/少ない、食欲がない、吐く、尿の色が薄いなど、膀胱の病気では、おしっこをチョコチョコする、尿が赤い、尿が臭う、尿が出ないもしくは出にくいなどの症状が出ます。

泌尿器分野で多い症状

  • 頻尿
  • 血尿
  • 排尿しづらい
  • 尿が出ない
  • 多飲多尿

泌尿器科の診断・検査

泌尿器の疾患はダメージを受けている臓器によって症状が異なります。特に泌尿器の疾患は慢性化しているものもあるため、定期的に検査を行うことが重要です。
また、泌尿器のみなのか、他の疾患が影響しているのかなどの原因を精査することが重要となります。そのため、多面的に検査できる体制を整えております。

泌尿器科の検査

検査名 検査の目的
尿検査 pHなどの生化学的性状や尿比重、尿たんぱくの定量的検査(UPC)、尿中の細菌数や白血球数の測定などを行います。
血液検査 BUN、Crea、SDMAなどのバイオマーカーやカルシウムやリンなどの数字から総合的に腎臓の状態を推定します。
画像診断
(レントゲン検査)
腎臓のサイズや形、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などについて調べます。一般的に腎臓のサイズは2番目の腰椎の2.5-3.5倍と言われています。
超音波検査:超音波検査は空間分解能に長けています。レントゲン検査で見落としがちな1mm程度の膀胱結石も超音波検査では確認できます。腎臓や膀胱の内部構造や辺縁構造、尿管の拡張の程度などを観察します。
血圧測定 当院では通常診療時の血圧測定にはオシロメトリック法を採用しています。IRIS(International Renal Interest Society)の慢性腎臓病の管理ガイドラインでも血圧測定が推奨されていることから可能な限り血圧を測定しています。動物ではヒトと同様の正確な血圧測定は難しいので、複数回測定して平均値を算出しています。


出来るだけ動物にストレスを掛けないようにして血圧を測ります。

代表的な泌尿器科の病気

慢性腎臓病:IRIS(International Renal Interest Society)

慢性腎臓病を次のように定義しています。
腎前性要因のない参考基準範囲内でのクレアチニンかSDMAの上昇、持続的なSDMAの上昇(SDMA>14μg/dL)、画像検査での腎臓の異常、持続性の腎性蛋白尿(犬:UPC>0.5、猫:UPC>0.4)のうちひとつでも該当すれば慢性腎臓病とする。
あるいは、水和状態を補正したうえでのクレアチニン値とSDMA値両方の上昇に加えて、尿比重の低下(犬:<1.030、猫:<1.035)がある場合にも慢性腎臓病とする。

症状は、食欲不振、脱水、水を多めに飲む、尿量が多い、嘔吐、痩せてくるなどです。
治療はそれぞれの症状に対応した対症療法が中心となります。

細菌性膀胱炎

膿尿かつ細菌尿である膀胱炎を細菌性膀胱炎と言います。膿尿とは尿検査で白血球がある一定数以上出ている尿で、細菌尿とは細菌培養で細菌が検出されている尿を指します。細菌性膀胱炎は散発性と再発性、無症候性に分類され、それぞれについて検査と治療法が異なります。当院では、国際コンパニオンアニマル感染症学会(International Society of Companion Animal Infectious Disease:ISCAID)が提唱するガイドラインに基づいて検査・治療をご家族に提案しています。

猫の下部尿路疾患(FLUTD)

猫下部尿路疾患(Feline Urinary Tract Disease)とは頻尿や排尿障害、血尿などの症状を示す膀胱や尿道の疾患の総称で、頻尿、血尿、有痛性排尿困難、不適切な場所での排尿、排尿障害などの様々な症状を示します。
10歳未満の猫におけるFLUTDの発症原因に関する調査では、特発性膀胱炎(Feline Idiopathic Cystitis)が55-65%、尿道栓子が10-21%、尿路結石が8-21%、解剖学的異常10%、問題行動9%、尿路感染症1-13%、腫瘍1-2%と報告されています。
※特発性とは原因が特定できないという意味です。

猫の特発性膀胱炎(Feline Idiopathic Cystitis:FIC)

猫の特発性膀胱炎とは、膀胱以外にも消化管・皮膚・神経・内分泌・免疫にも異常を伴う疾患です。臨床症状は良化や悪化を繰り返し、環境改善によって症状が改善すると言われています。特発性膀胱炎の発症原因はよくわかっていませんが、ストレスに対する反応の異常・感覚受容体の異常・膀胱粘膜の異常などが原因になっているのではないかと言われています。
難病指定されているヒトの間質性膀胱炎と組織学的な特徴が類似しているといわれています。

リスクファクター

内因的因子:中年齢(2-7歳)、雄、肥満、神経質で臆病な性格、活動性が低い、水分摂取量が少ない
外因的因子:完全室内飼育、多頭飼育、安全で快適な空間がない、同居猫との関係、引っ越し、トイレの問題など

経過

急性に発症し無治療でも自然に寛解(80-90%)、頻繁に再発(2-15%)、慢性持続性に症状を呈する(2-15%)、閉塞性(15-20%)となっています。
因みに尿路閉塞を伴うFLUTDはFLUTD全体の中で29-58%と報告されていて、閉塞の原因はFIC(29-53%)、尿道栓子(18-59%)、尿路結石(12-29%)と報告されています。
しかしながらFICによっても尿道栓子が形成されることを考慮すればFICと尿道栓子を完全に分けることは困難であり、尿道栓子の原因として細菌感染が特定されなければFICの結果として尿道栓子が形成されたと考えて治療をします。

FICのほとんどは無治療でも1週間以内に自然に症状が改善しますが、39-65%の症例で1-2年以内に再発します。なかには持続的もしくは間欠的に症状を示し続ける症例もいます。

大事な事なので繰り返しておきますが、FICのほとんどは無治療でも1週間以内に自然に症状が改善します。抗生物質も病院食も必要ありません。そして、10歳未満の猫におけるFLUTDの発症原因に関する調査では、FICが55-65%、尿路感染症1-13%と報告されています。FLUTDの55-65%がFICによるものであってそのほとんどは無治療で1週間以内に自然に症状が改善するということになります。ちなみに尿路感染症は1-13%ですから、膀胱炎症状があっても抗生物質が効く確率は統計的には1-13%ということになります。無菌的な採尿によって細菌性膀胱炎であることが証明されれば抗生物質治療が推奨される場合もあるとは思いますが、膀胱炎症状のある動物に対する盲目的な抗生物質の投与は薦められません。

耐性菌問題:2016年に発表されたO’Neill Reportによると2013年のG7(先進7か国主要会議国)における耐性菌による死者数は少なく見積もって年間70万人だが、このまま何の対策も足らなかった場合2050年の年間死者数は1000万人を超えて現在のがんによる死者数を超えると報告されています。動物に処方された抗生物質によって耐性菌が作られると、耐性菌によって動物の健康や生命が危険にさらされるだけでなく、耐性菌はその動物のご家族にも感染してその健康や生命にも危害を及ぼす可能性があります。耐性菌を作らないようにするのはヒト医療でも動物医療でも急務だと思われます。

診断

超音波検査やレントゲン検査などの画像検査、尿検査、尿細菌培養検査によって、腫瘍や結石・構造異常・細菌感染が否定されて膀胱炎があれば特発性膀胱炎と診断します。

治療

FICを完治させることは困難なので、治療の目標は症状の軽減と再発回数を減らして猫とご家族のQOLを改善することにあります。
治療は多面的な環境改善(室内環境、トイレ、水分摂取)です。多面的な環境改善を補う意味で薬物治療が行われることもあります。

下部尿路結石

下部尿路に発生する結石には、シュウ酸カルシウム結石、リン酸アンモニウムマグネシウム(通称ストラバイト)結石、リン酸カルシウム結石などがあります。発生はシュウ酸カルシウム結石とリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)結石がそのほとんどを占めていて、割合は大体1:1です。症状は尿が出ないあるいは出にくいといった排尿障害、血尿、頻尿などです。
診断はレントゲン検査や超音波検査などの画像検査によって行われますが、画像検査では結石の種類を特定することはできません。尿検査にて尿中のシュウ酸カルシウム結晶を確認すればシュウ酸カルシウム結石、リン酸アンモニウムマグネシウム結晶を確認すればリン酸アンモニウムマグネシウム結石を疑います。採尿から時間が経過すると尿中には結晶が析出するので尿検査は速やかに実施する必要があります。
シュウ酸カルシウム結石の生成原因は不明ですが、2016年にACVIM(American College of Veterinary Internal Medicine)がシュウ酸カルシウム結石発症予防に関するガイドラインを発表しています。

診断

レントゲン検査や超音波検査などの画像検査によって診断されますが、画像検査では結石の種類を特定することはできません。尿検査にて尿中のシュウ酸カルシウム結晶を確認すればシュウ酸カルシウム結石、リン酸アンモニウムマグネシウム結晶を確認すればリン酸アンモニウムマグネシウム結石を疑います。採尿から時間が経過すると尿中には結晶が析出するので尿検査は速やかに実施する必要があります。

治療

外科手術
結石の治療は主に膀胱切開による結石の摘出になります。膀胱内にある結石は膀胱切開によって摘出します。尿道に詰まった結石はカテーテル操作などにより膀胱に戻した後に膀胱から摘出しますが、尿道から動かない結石については尿道切開によって摘出します。
結石の種類によっては内科療法による溶解が可能な場合もありますが、シュウ酸カルシウム結石やリン酸カルシウム結石などのカルシウムが含有された結石は外科手術が必要になります。

内科療法
リン酸アンモニウムマグネシウム(通称ストラバイト)結石の多くはその形成に細菌感染が関与していると言われているので、細菌感染の管理と食事管理によって溶解が可能です。

シュウ酸カルシウム結石の生成原因は不明ですが、2016年にACVIM(American College of Veterinary Internal Medicine)がシュウ酸カルシウム結石発症予防に関するガイドラインを発表しています。

シュウ酸カルシウム結石の予防ガイドライン(ACVIM 2016)

1:尿比重を下げる
尿比重 犬:1.020以下、猫:1.030以下を目指します。ドライフードからウェットフードに切り替えたり、ドライフードに少し水を足したりして飲水量を増やして尿比重を下げます。(予防ガイドラインのなかで低比重尿を維持することが一番重要)

2:尿pHを上げる
尿pHが6.5未満であれば尿pHが上がるようにクエン酸カリウムを内服します。

3:栄養専門の獣医師に相談
1と2で目標が達成できない場合に、栄養専門の獣医師に相談してホームメイド食を試します。
(残念ながら2022年現在、日本国内に栄養専門の獣医師はおりません)

4:利尿剤を飲ませる
ヒドロクロロチアジドという弱い利尿剤を犬:2mg/kg 1日2回、猫:1mg/kg 1日2回で飲ませます。
通常副作用がでることはありませんが、電解質と腎臓の数値を定期的にモニターします。
(ガイドラインにはありませんが、3-4か月使って予防がうまくいっていれば半量でもいいことが多くなっています)

ACVIMはシュウ酸カルシウム結石予防のためには、まず尿比重を下げるために飲水量を増やす、次に尿pHが低ければ高くしておく、その次に食事内容を考えるという順番で考えるように提言しています。
ここまでしてもシュウ酸カルシウム結石が再発することがありますが、膀胱内のシュウ酸カルシウム結石がまだ小さければUrohydopropulsion法という方法で膀胱結石を体外に排出させることが可能な場合があります。Urohydopropulsion法は麻酔下で膀胱内の微小な膀胱結石を体外に排出させる方法です。メリットは外科手術が避けられることですが、デメリットは全身麻酔あるいは鎮静が必要であることと、膀胱内の結石のサイズによっては尿道閉塞のリスクがあること、操作により膀胱炎が発症することがあることです。メリットがデメリットを上回りそうな場合に、この方法をお勧めしています。


Urohydopropulsion法にて取り出した細かい膀胱結石です。シュウ酸カルシウム結石についてはガイドラインに沿った予防をしてもらっても再発することがありますので、定期的な画像検査をお勧めしています。画像検査で小さな結石が確認された場合にはUrohydopropulsion法にて結石を排出させることが可能です。
このサイズの結石をレントゲンで確認するのは困難です。膀胱の超音波検査で結石の有無について確認します。